地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


定住状況と途中退任者の現状

 
 

今回で一つの節目となる第十回となりました「地域おこし協力隊の仕事」ですが、今回は「地域おこし協力隊の現状」シリーズの第7弾として、総務省のHPで公表されている情報以外にはあまり実態が知られていない任期満了後の定住状況やその前提となる仕事の状況について、さらには情報としてはほぼ存在しない途中退任者の現状についてご紹介いたします。


なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

さらに前回同様、今回のブログも特に現在隊員を受け入れている自治体の職員の皆さんやこれから隊員を募集することを考えておられる自治体の首長を始め、関係者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんがどのような背景を持ち、どのような思いで隊員に応募してきたか、活動中に感じている不安はどんなものかなど隊員の皆さんの現状について受け入れ自治体の皆さんに知っていただくことで、隊員の皆さんへの理解を深めていただくと同時に地域おこし協力隊の成功の必須要件である隊員と受け入れ自治体および職員との間の信頼関係を築く一助になれば幸いです。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

定住状況

まずは任期満了者の定住状況ですが、総務省が平成23年度から概ね2年毎に公表している任期満了者の定住状況の調査結果によると制度導入後初めて3年任期満了者が出た平成23年度末(厳密には平成24年1月末)は7割弱の定住率だったのに対して、その約2年後の平成25年度(厳密には平成25年6月)には5割を切る水準になっています。また、平成27年3月末の最新データでも5割を切る水準となっていると同時に定住率は少しずつですが減少傾向にあるようです。

※データの連続性を担保するために近隣市町村を移り住んだケースは非定住に分類

当社が行った隊員向けアンケートにおいても定住状況・定住意識についてお聞きしていますが、任期満了者の凡そ6割が、現役隊員の8割弱が定住意向を持っているという結果になり、任期満了者の定住意識としては総務省の調査結果とほぼ同じ結果となっています。
また、当社のアンケート結果からはもう一つ任期中の定住意志と実際に定住する/できる人との間で少なくとも何かしらの差があることが分かります。

また、平成25年7月時点で任期満了し定住した方の2年後の状況を総務省が調査していますが、定住者の98%はそのまま定住しているという結果でした。
この調査結果を見る限り、定住を決めた人の多くが少なくともその後2年間はその地域に住み続けていることが分かります。


直接取材の中でも受け入れ自治体の職員および隊員の双方に定住見込みについて伺っていますが、最近隊員を採用した自治体の担当職員が感じる定住見込みは3割、よくできて5割という話がある一方であまり数は多くないですがすでに多くの任期満了者を出している自治体においては実績ベースで3年任期満了者の定住率が100%であるところもありました。

また、現在活動中の隊員の方々にも定住意向について伺いましたが、お話をお聞きした方の大半が定住を前提に考えており、定住しないと明言されている隊員の方が少数派であるという結果になりました。
この背景には、将来に対する選択肢がそれほど多くない隊員も少なくないため余程のことがない限り定住しないという選択肢自体が取りづらいという現実もあるようです。
しかしその一方で、この定住意識にも第四回「成り手①」でも触れた地域おこしに対する思い同様隊員間で温度差がある様子も伺え、方や「その地域に骨を埋める」という姿勢で臨んでいる方もいれば、その一方で「定住するかどうか解らない」という姿勢を地域の人や役場の職員に対して示している方もおられ、その姿勢の違いが活動の充実度や活動の成果にマイナスの影響を与えている隊員も少なからずおられました。

これらの結果が指し示すことは第二回「制度・導入状況」でも触れましたが、ここ数年隊員数が急増している影響もあり隊員総体として「地域おこし」に対する思いやそこに紐づく定住意識の濃度が薄まってきていると捉えることもできるのではないでしょうか。
また、そのように考えると今後もさらに定住意識が下がり、定住率が下がっていくことのではないかと推測されます。

定住者の仕事

定住者の仕事についても前述の総務省が公表している任期満了者の定住状況の調査結果に掲載されていますが、それによると制度導入当初は「就農」がもっとも多く5割に迫る勢いでしたが、その後「就農」は減少傾向となり、近年は「就業」がおよそ5割を占め、「就農」、「起業」がそれぞれ2割弱を占めるという状況となっています。

地域おこし協力隊制度導入当初に就農が多く、その後減少している背景には、制度導入当初にどちらかといえば農業振興に重きを置いている「緑のふるさと協力隊」や農林水産省が推進していた「田舎で働き隊」から「地域おこし協力隊」に切り替えているケースも少なからずあることも影響しているようです。

※緑のふるさと協力隊
一年限定で農山村の地域づくりに取り組むプログラム。協力隊との違いは、協力隊が仕事であるの対して、緑のふるさと協力隊はよりボランティアに近く「地域貢献活動」と定義されている。そのため報酬が5万円、住居と水道光熱費が用意されているという処遇がベース。1994年からスタートした施策であり23年間で738人が農山村で活動、そのうちの41%が定住という実績。また、協力隊は総務省と各自治体が主催であるのに対してこちらは地球緑化センターというNPO団体が主催となっている。

詳細情報はhttp://furusato-kyoryokutai.comをご覧ください。
※田舎で働き隊
農山漁村地域における活性化活動に関心を持つ都市部人材等の活用を目的とする人材育成システムの構築に向け、人材育成をはじめ都市と農村の交流等の企画力を有する仲介機関に助成を行う事業。ただし、地域おこし協力隊の発足にあわせ平成22年に廃止。

また、総務省が公表している任期満了者の調査結果には任期満了者の職業も載っていますので参考までに掲載いたします。

就農
・水稲・野菜・果樹の栽培、有機農法により営農、認定就農者(キウイ農家)、農林業、就農にむけた農家での研修
就業
・農業法人等の営農組織、移動販売、福祉施設、障害者の農作業の指導、森林組合従業員、県内物産会社、自治体職員(自治体施設を含む)、印刷出版、地元企業、道の駅職員、NPO法人、地域再生関連組織(自治体出資の株式会社、移住交流コーディネーター業)
起業
・デザイン・造形業、飲食店経営、整体師、特産品販売、鍼灸院開設
その他
・震災復興ボランティア、大学へ復学、就職活動等、集落支援員
就農
・稲作・畑作・果樹栽培、林業、農業生産法人において就農研修中、等
就業
・民間企業、新聞社、飲食店、地方自治体、社会福祉協議会、病院・福祉施設、保育所、観光協会・案内所、道の駅、タウンマネージャー、NPO法人、第三セクター、農業法人、森林組合、農業等体験施設、等
起業
・株式会社設立、一般社団法人設立、NPO法人設立、農業法人設立、飲食店経営、カフェ経営、鍼灸院開設、整体師、経営コンサルタント、等
その他
・結婚、家事手伝い、起業準備中、等

定住者の仕事について直接取材においても職員・隊員の双方に聞いており、仕事内容毎にお聞きした内容を下記のようにまとめてみました。
まずは「就農」ですが、多くの職員の方の話では農地法により農地の所有者しかその農地で取れた作物を出荷できないという制約があるため農地を得るという大きなハードルを越えなければならないという現実があるとのこと、一般的に過疎地域などには耕作放棄地・休耕田が多いという事実もあることからハードルが低いと考えられがちですが、農地は基本的に資産でありそれを譲り受けるためにはそれなりの資金が必要になります。
もちろん借りるという方法もあるのでしょうが、仮に農地を借りることができたとしても上述のようにその農地で取れた作物は基本的に農地の所有者のものとなるため、勝手に出荷することはできないことから地域の人脈や経済力に乏しい協力隊の任期満了後の仕事としては起業に次ぐ、もしくは起業と同程度の難易度という印象を受けました。

また、一方で実際に農業を主な活動にされている隊員の方にもお話を伺いましたが、まず一つ言えることは協力隊の皆さんの活動の中でも農業のような一次産業を主な活動にされている方は絶対数が少なく、さらに任期満了後に専業農家を目指している方はさらに少ないということ、しかし、その一方で、任期満了後に専業農家を目指している方のお話をお聞きする限りでは、新規就農者に対する様々の支援の仕組みもあるらしく、職員の方がおっしゃられるような難しさをそれほど感じておられず堅実に情報収集し、活用できる制度を確実に活用することを考え、同時に地域の農家には十二分に配慮している姿勢も伺えました。
つまり、非常に成熟した職業であることから仕組み自体がきちんと整備されていること、地域には多くの経験者がいることから暗中模索のような状況にはなりづらい仕事と言えるかもしれません。


一方、「就業」された方の就業先について同じく総務省公表のデータから見てみると地方自治体職員や観光協会、社会福祉協議会、第三セクターなど公社や半公社組織が多い事が分かります。
実際に自治体の方々にお話をお聞きする中でも可能性として公社や半公社組織への就業が結果的に多くなるという声も多く聞かれ、任期満了者を多く出している自治体においても実態として公社や半公社組織への就業者が少なからずいることから、協力隊の任期満了後の仕事としてかなり現実的なものであると考えられます。

第六回「募集条件・処遇・採用」でも触れた通り公社や半公社を活動拠点とすることが多いミッション型の採用が近年増加傾向にあることも、この流れの一つの表れかもしれません。

しかし、「就業」という形で公社や半公社に就職することは、第六回「募集条件・処遇・採用」でも触れた通り結果的に地域の雇用機会を外部から来た人材が奪う可能性もあり、「就業」が一番多いということが果たして良いことなのかという疑問を持たれる方もおられるかもしれません
その一方で地域おこし協力隊を「地域おこし」を中核的に行う人材という視点で考えれば、任期中に地域を知り、その間に得た地域に関する様々な疑問や課題、アイデアなどを任期満了後により一層具現化できるポジションにつくことは、投資対効果の観点からも妥当かつ一貫性があるといえます。
これは、いうなれば地域おこし協力隊制度の一つの側面として「地域おこし」という専門領域を持つ人材を育成する一連のプロセスと考えることもできるということであり、事実任期満了後に「地域おこし」に関するコンサルティングビジネスを起こす方も少なくないとお聞きしており、この新しい専門分野を生み出したことも地域おこし協力隊制度の一つの功績であると同時に、地域においては地域おこしの中核人材を手に入れたと考えれば十分な地域住民説明を前提に前向きに推進しても良い方法ではないかと個人的には思います。


一方「起業」については、そもそも0を1にする作業であることから難易度が高いことはいうまでもないことですが、アンケートにおける「伝えたいこと」に回答いただいた下記のような声からも、地域活動をする傍ら起業準備をすることはかなり無理があるだけではなく、協力隊の報酬だけで起業資金を蓄えることも困難であるためさらに難易度が高いと感じている様子が伺えます。

「また任期終了後に起業をと勧められることが多いが、金銭面として起業資金を貯めることは協力隊の賃金内では現実的に難しく、また起業準備の時間も任期中の業務と並行して進める事が難しいため任期終了翌日から本格的な準備に移るしかなく、開業までの数ヶ月、半年の生活に不安を感じている。」
「協力隊の支援制度として起業支援が必要だと思います。」
「みんなにいい顔ばかりしていると、自分のやりたいことができずに終わってしまいます。起業を考えているのであれば、残り一年、残り半年などは自分のために活動するという割り切りが必要です。」
「将来的に臨職(臨時職員)などの職員採用が前提であれば関係ないが、退任後の起業や就業を基本に考えるようであれば3年間は短い。」
「任期終了後に自立した活動をすることを考えると3年間はあっという間に過ぎます。着任してすぐにでも、自立へのスケジュールを立てる必要があります。ビジネスベースで考え、自立が可能である企画を立て、それに向けた活動を日々していくと目標を達成できると思います。受け入れ側が立てたスケジュールで、絶対に自立できるという保証はありません。そのスケジュールが、自立する上で無理があるスケジュールと感じたなら、きちんと自分の意見を言い、できるだけ早く対処すべきかと思います。(体感では最初の1年間で、任期終了後の道筋ができていなければ、時間が足りなくなると思います)」

総務省が平成27年度に公表したデータによると上記のような状況の中でも起業する方が17.2% おり、しかも年々増加していることはとても素晴らしいことであると感じると同時に一般的に起業後3年でほとんどの会社が事業をたたむと言われる中、事業の継続性を如何に担保するかが重要なポイントになることはいうまでもありません。


また、任期満了後に起業された方々のお話をお聞きする中では、事業を立ち上げることはできたとしても安定した収入が得られるほど継続的かつ安定的な収益を上げられている方は非常に少なく(というより皆無?)実態として定職を持つパートナーの収入に頼っていたりアルバイトをしながら生計をつないでいる方もおられるという実態を見ることができました。
定住のための安定した収入を得る手段として起業を成功させることが非常に厳しいという実態が伺えると同時に協力隊の受け入れ態勢の整備はもちろんのこと、起業支援という観点でも改善の余地が大いにあると感じさせられました。

そんな状況下でも幾つかの事例においてこれから期待できる試みもあり、そこに共通している点は、起業を考えている事業を任期中から始めることに自治体が協力的かどうかという点です。
たとえば、第六回「募集条件・処遇・採用」でも触れた「副業可」の中でも任期中に将来の起業につながる事業から収入を得ることを認めている自治体では、起業を目指す隊員は任期中に早々に任意団体の形で事業を立ち上げ、隊員としてある程度の報酬が保障され行政機関のサポートも受けやすい状態で試行錯誤をし、失敗を繰り返し、その失敗を通して多くのことを学ぶことができることから、最終的には任期満了後の事業立ち上げがスムーズになるだけでなく、任期中に株式会社化し役場の信用のもと資金調達することもできることから人・物に対する投資余力も生まれ、事業の安定性・継続性を高めることができるのではないかと思います。いうなれば隊員任期中にテストマーケティングを行うことでニーズを確認したり、商品・サービスの改良を行ったり、流通ルートを開拓したりすることができるという点、さらには任期中に株式会社化することで資金調達のしやすくなるという点で起業を考えている隊員にとってはとても有益であり、起業を考えている隊員を抱える自治体においては大いに検討の余地があることではないかと思います。

地域おこし協力隊の任期満了後の起業をサポートする仕組みとして新たな仕組みを考えることも必要かもしれませんが、その前に「副業」の考え方のように運用における少しの工夫が起業サポートにつながることもあることから、まずは運用を担当する職員個人ができることから見直してみることも重要かもしれません。

途中退任者の実態

 

総務省が平成22年から年に一回公表している協力隊受け入れ自治体別の隊員数を時系列に並べ、前後の隊員数の差を算出してみると前年に対して人数が減っているケースを時折見ることができます。
新規採用数や任期満了者数だけを切り出した公表データがないため上記の減少しているケースの中には途中で退任された隊員だけではなく3年の任期を満了した隊員も含まれていることから現時点では純粋な途中退任者数を把握することはできませんが、隊員や自治体の担当職員の方々へお話をお聞きする中で途中退任者は少なからずおられること、そしてその実態を垣間見ることができました。

具体的には、着任早々に活動内容について自治体側と揉め、着任3ヶ月で退任されたというケースや「家庭の事情」という理由で着任数ヶ月後に退任されたケース、「別な就職口が決まった」という理由で着任数ヶ月で退任したケースなど、様々なお話がありましたが、大半は受け入れ自治体や周囲におられた隊員からお聞きした話であり、当然ですがほとんどの隊員がすでに退任してしまっているため、退任の本当の理由について正確なところはわかりません。

そんな中、隊員としての活動に困難を感じておられ、隊員としての進退を悩まれている方からお話をお聞きする機会がありました。
その方のご経歴は非常に素晴らしいものであり、お話をお聞きしていても裏表のない非常に率直な方にもかかわらず困難な状況になってしまっていることがとても不思議に感じましたが、深くお話をお聞きしていく中で受け入れ自治体が思っている「やらせたいこと」と隊員が「やりたいこと」の間に根本的な溝があることがわかりました。
具体的には、ミッション型の活動内容により採用された隊員の方のお話なのですが、与えられたミッションに加えて、自分なりに地域住民と話をし、地域に良かれという思いで与えられたミッションに加え別の地域おこし活動も行っていたのですが、受け入れ自治体の担当者としては、ミッションの範囲を超えた活動を認めず、与えられたミッションだけをするよう隊員の活動を制限し、最終的には隊員の言動に全般に対して受け入れないという姿勢をとられたということでした。

この方のケースは、採用時にお話をされた自治体担当職員が着任時には人事異動により別の課に異動していたこともあり、採用時の話と異なる部分を職員・隊員ともに感じていたのではないかと思われ、少し特殊のケースかもしれませんが、実はこのように与えられたミッション以上のことをしようとする隊員の行動を良しとしない職員の話は少なからず聞かれることから、地方自治体の組織文化の一つとして根づいていると言われる強い縦割り文化や事なかれ主義の表れの一つかもしれません。

また、この方の場合は大いにもめた挙句、最終的には自治体都合という形で地域おこし協力隊を退任されましたが、やり取りの中で自治体の担当者から自主的に退任することを暗に求められたという経緯もあり、この話から自己都合で退任された方の中には実は自治体により退任に追い込まれた方も少なくないのではないかと推測されます。

なお、蛇足ですが自己都合退職と会社都合・自治体都合退職では、退職後の失業保険の受け取り時期が異なってくるという経済的な違いがありますので、安易に自己都合で退任することは避けるべきだと思います。

次に別なケースになりますが、着任して半年で退任した隊員が辞める前に同期隊員に対して本音として語った退任理由をご紹介致します。

「自治体が目的を持って協力隊制度を運用していないこと」
「地域住民に危機感がないこと」
「そのため何か企画しても響く場所がないこと」

このように自治体職員のみならず地域住民にも危機感ややる気がないという話はよく聞かれ、まさに上記のコメントのように「響く場所がない」という理由で途中退任される方も少ないないと思われます。
また、この隊員は、上記の本音については自治体職員には一切話をせず、実際自治体の職員の方もこの方の退任理由を「他の仕事が見つかった」と理解しており、表面的な退任理由が実態を物語っていない典型的なケースではないかと思います。

さらに別のケースになりますが、隊員受け入れ歴が比較的長い自治体の担当職員から途中退任された隊員の退任理由をお聞きする機会がありましたが、着任地域の規模が小さかったため思い描いたような事業ができないことを理由に退任された方や、まさに「家庭の事情」になりますが結婚するということで途中退任された方もおられたとのことでした。

このように途中退任と言ってもネガティブなものからポジティブなものまで様々であり、現在利用可能なデータでは統計的にどのようなケースが多いのかを把握することはできず、あくまでも感覚の域を出ませんが、今回色々な方と話をしているか中で途中退任の直接的な要因の多くが、「やる気のある隊員」に対して「やる気のない職員(もしくは地域住民)」という構造に起因している気がしてなりません。
つまり、仮にも転居までしてその地域の活性化を仕事として手伝うために着任したが、受け入れ自治体の職員は地域おこしにそれほど関心がなく、他に多くの定常業務などもあることから地域おこし活動や地域おこし協力隊の面倒を見ることは全体のほんの一部でしか感じていない実態があり、同時に地域住民はこれまでに自治体に至れり尽くせりの対応をしてもらったという経緯もあり自分で考えて・行動する力が大幅に低下している中で、自ずと隊員と地域の意識・考え方・行動に差が生まれ、その差を埋めることができなければ、強い思いを持っている人ほど見切りをつけ、その地を離れるという決断をするということに繋がってくるようです。
加えて昨今の売り手市場も相まって、人材の流動性が高まっていることからある自治体の地域おこし協力隊を途中退任した方が、別な自治体の地域おこし協力隊に応募するということも難しくない状況もあり、今後しばらくは途中退任者の増加傾向は続くのではないかと思われます。

一方で安易に途中退任者を出さないようにするためか自治体への特別交付税の交付は、実績ベースで通年隊員が活動した場合に限っているという話も聞かれ(つまり、4月採用で翌年の5月の途中退任であれば1年分の交付税が交付されるが、同年の10月に途中退任した場合には全く交付されない)受け入れ自治体に対して間接的に活動環境の改善を促している様子も伺えます。

また、もう一つ気になったことは、気の利いた企業であれば一般的に行われている退職者に対する退職時インタビュー(Exit Interview:イグジットインタビュー)が行われているという話を一度も聞くことがなかったことです。
退職時インタビューは、組織の人材活用環境の改善のために行われるものであり、一般的には本音が言いづらい直属の上司ではなく、コンプライアンス意識の高い人事部などのそれなりの立場の方がインタビューし、途中退職者が退職した本当の理由を聞き出すと同時に、必要があれば直属の上司への指導が行われたり、人事異動が行われたり、人事制度が見直しされるなど、課題の抽出と改善策の立案・実行のために使われますが、地域おこし協力隊においてそれが行われていないということは、地域おこし協力隊の運用改善のための貴重なインプットを失っているとも言え、もったいないと感じると同時に、そのような状況であるがゆえに制度導入からすでに7年が経過しているにも関わらず、未だに多くの隊員が受け入れ態勢に対する不満を抱えていたり、途中退任者も出るなど地域おこし協力隊の運用現場の課題が変わらない要因ではないかとも思われ、とても残念です。

最後に

今回取り上げたテーマの一つであり定住者の仕事について少し視座を変えてみると、地域おこし協力隊は定住を目的として導入された制度ではありますが、定住するには仕事が必要、しかし、仕事があれば人が減ることはなくそもそも条件不利地域になることもなく地域おこし協力隊も必要としないという論理矛盾が起きている状況であるとも言えます。
それが故に本来は仕事探し/仕事につくという作業は個人個人が行うべきものであり、個人の努力により積み上げられた知識や経験が仕事へと繋がっていくという考え方が基本である中で、地域おこし協力隊に限っては就業・起業支援が必要だという議論がある一方でなかなか整備が進まない要因でもある思います。

しかしながら、すでに実際に仕事が基本的にない条件不利地域に地域おこし協力隊を派遣してしまっており、自治体は受け入れてしまっているわけですが、露骨に仕事を斡旋することは難しいでしょうが、少なくとも隊員の次に繋げるような機会を提供する体制をきちんと整えることは必須ではないかと思います。

一方でもう一つの大きなテーマである途中退任者の現状ですが、現実としてはあまりにも明るみになっている信頼性の高い情報が少なく現状を正しく把握することも困難な状況ですが、氷山の一角であることも多いことから、見えないところで多くの途中退任者がでていると想像されます。
途中退任の問題は、途中退任されたことにより再募集・採用のためのコストが増えることや隊員・職員双方の機会損失もありますが、最も大事なことはこの途中退任の要因としての隊員の姿勢、受け入れ自治体の姿勢・受け入れ態勢の不備など地域おこし協力隊の運営におけるもっと根本的な問題が隠れているということであり、それを見逃してはならないということだと思います。
だからこそ、退任者数の把握や本文中でに触れたように退任者インタビューを義務付け結果を報告させるなど、きちんとPDCAを回せるインプットが得られるようにすべきであるということだと思います。

では、隊員としては、この現状に対して何ができるのでしょうか。
地域おこし協力隊になる前であれば応募地域や担当者などきちんと受け入れ地域や自治体を見極めることが大事ということになると思いますが、一度地域おこし協力隊として中に入ってしまうと権限も何もない状況であるため、できることは実は少なく、非常にありきたりですが、積極的に情報発信すること、できる限り多くの味方を作ること・敵を作らないこと、必要とされるようにコツコツと実績を作ることがシンプルに重要になってくるのではないかと思います。
味方を作るという意味では、地域住民や役場内など活動地域を超えSNSなどで自分の活動を積極的に発信することで、間接的に外の目を作り出すことという方法もあると思います。(上手にやらないと受け入れ自治体からSNSでの情報発信を暗にやめるように求められるケースもあるようですが、、、)

以上、今回は「定住状況と途中退任者の現状」ということでお伝えしてきましたが、実は「地域おこし協力隊の現状」シリーズとしては今回が最後であり、次回からは受け入れ自治体の実態ということで、地域おこし協力隊の受け入れを行っている自治体組織の現状、職員の皆さんを取り巻く環境について直接取材を通して垣間見たことを踏まえご紹介し、自治体職員の皆さんの対応が不十分であるという話も多い中で実は職員の皆さんも難しい環境で仕事をされていることをお伝えできればと思います。

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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