地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


隊員活動を有意義にするBetter Dos(すると良い行動)

 
 

前回、前々回と先行者(先輩隊員)の事例を通して隊員活動を有意義なものにする上で具体的にすべき行動・すべきではない行動をご紹介してきましたが、今回は協力隊の方であれば知っておくと良いことについてご紹介したいと思います。

現在4,000人の隊員がおられ、隊員の皆さんの強み・弱みはそれぞれであるためそれを活かした隊員活動の取り組み方、考え方・姿勢は千差万別ですが、それでも、隊員の皆さんが一度は通る土台となる共通項は確実に存在すると思います。
本記事をお読みいただいているみなさんのより良い隊員活動の一助になれば幸いです。

なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。


*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

基本的な情報発信手法を理解する

地域おこし協力隊の活動の一環として地域行事や地域おこし活動を紹介するケースが多く見られ、それが地域おこし協力隊に具体的に求められる役割の一つであるとも言えますが、SNSなどの発展により個人として比較的容易に情報発信が行えるようになったこともあるのかもしれませんが、基本的に「何を」、「誰に」伝えたいのかが明確になっていない場当たり的な情報発信が多く見られ、とてももったいないと思います。

せっかく情報発信をするのであれば基本的なことをきちんと理解していくことが大切だと思います。


「ターゲット」と「伝えたいこと」

マーケティングにおける基本的な考え方でもありますが、情報発信を行う上でどんな方に何を伝えたくて、そのためにもっとも効率が良い媒体は何かを決めた上で情報発信を行う必要があり、それなしでは数多くある普通の情報の一つに埋もれてしまい、全く意味を成しません。
また、最低でも情報を伝えたいターゲットの年齢層・嗜好特性・家族構成くらいは定義すべきではないかと思います。

たとえば、移住・定住促進をミッションとする場合や「人が集まる場」作りを目指すコミュニティー型の協力隊の場合には、その地域の日常の暮らしを発信していくことを通してそのライフスタイルの魅力を伝えていくこと、そして、その魅力に共感する人を呼び込んでいくことが目的になってくるのではないでしょうか。
伝えたいことが地域の方々とのつながりの中で自然と共存しながらシンプルに暮らすライフスタイルであれば、都市部で暮らす自然嗜好の20代30代の多忙な共働き子育て夫婦をターゲットとし、新しいライフスタイルを提案していくのも一つかもしれません。

たとえば、豊かな自然環境という資源を活かすことをミッションとするミッション型の隊員の場合であれば、その地域でしか見ることが自然資源・景観、その自然環境でしか体験できないことなどを伝えていくことが大切となり、アウトドアライフに興味がある方々、子供にアウトドア体験をさせたいがなかなかできない都市部に住む子育て世帯に対してアウトドアでの体験をとして得られる価値を提案していくことかもしれません。

このように同じ活動であっても、ターゲットと伝えたいことは多種多様であるということは、言い換えればしっかりとターゲットを絞り、伝えたいことをはっきりさせなければ情報を伝えたい人にきちんと情報が伝わらないということになります。

特に昨今はGoogleなどの検索エンジンで情報を収集する方も多く、検索エンジンの仕様上きちんとターゲットや伝えたいことを明確にされたコンテンツが検索上位にくる傾向が強いこともあり、「ターゲット」と「伝えたいこと」の明確化の重要性を十分に理解することが最初のステップではないでしょうか。

端的に言えばミッションや目的が明確になっていない情報発信は一貫性がなく、ブログやSNSに好きなことを載せていることとなんら変わらず、個人のライフスタイルの発信としてはありかもしれませんが、地域おこし活動としての情報発信としては意味がありません。


媒体選びと誘導

上記でターゲットと伝えたいことを明確にしたら、次に行うことは伝える媒体を的確に選択し、最小のコストで最大の効果を生み出すこと、つまりCPAの最小化(CPA:Cost Per Account:一顧客当たりの獲得コスト)を実現できる媒体選びです。そして、その広告媒体への接触から詳細情報や申し込み手続き情報にきちんとターゲットを誘導するパスを作ることが大切になります。
つまり、適切な場所に種を撒き、もっとも効率良く収穫ができるような仕組みを整えておくということです。

テレビ広告は未だにもっとも強力な広告媒体ですが、地域おこし協力隊の情報発信としてテレビ広告は現時点ではあまりポピュラーではないため、ここではそれ以外のメディアを例に話を進めたいと思います。

地域おこし協力隊がもっとも多く利用する媒体としてはブログサイトやSNSがあると思いますが、ご存知の通りSNSにも様々あり、それぞれに特性を活かした使い方をすることが大切だと思います。
良く見られる方法は、受け皿となる申込受付サイトや商品販売のウェブサイトを作り、FacebookやTwitterなどのSNSでそのサイトに誘導するものです。また、ソーシャルメディアの変化は早く今はちょっと違うかもしれませんが以前一般的にいわれていたFacebookとTwitterの違いとしては、Facebookは年齢層が高く、Twitterは比較的年齢層が低いこと、Facebookに比べTwitterはその特性からタイムリーに使えば瞬間的な情報伝播力が高いと言われています。これらの特性を活かした情報発信に少し気を使うだけでも情報を届けられるターゲット数が変わってくると思います。

この辺の話についてはそれなりに奥が深いためここではこれ以上触れませんが、本屋さんに行けばいくらでも関連の書籍を見つけることができますので、協力隊として情報発信を真剣に行っていくことを考えているのであれば必読だと思います。

ターゲットに確実にリーチする媒体を選択する上で注意すべき点は、新聞、雑誌、facebookなどの単位ではなく、それぞれの対象となる読者を把握し、もっと細かい単位で選択することが重要です。紙媒体のメディアであっても自分がターゲットとしている集団に届くメディアを選ばなければなりません。たとえば、都市部の子育て世帯をターゲットとした移住・定住促進の提案の場合、ローカル新聞に取り上げられてもあまり意味はないですよね。
Facebookを活用するのであれば単に自治体サイトに移住・定住を考えている方々向けに情報を載せるのではなく、その情報を関心のある方々に見てもらうために移住・定住のグループに転載するなどさらにもう一歩踏み込んだ対応が必要になると思います。


伝達度の把握とPDCAサイクル

情報発信を開始したら、自分が発信した情報がどの程度きちんと想定しているターゲットに届いているのかを定期的に把握し、多くのターゲットに届いたコンテンツはどんな内容で、その時の媒体はどんなものでその時間帯はいつかなどしっかりと把握し、次の情報発信時に活かしていくことが大切です。つまり、いわゆるPDCAのCとAです。

ウェブブログであれば、事前にきちんと設定することでGoogle Analyticsなどでどんな年齢層のどの地域からのアクセスが多かったか、SNSであればたとえばfacebookのリーチ率やtwitterのインプレッション率などでどのくらい伝達したか確認することができます。
地道な作業ですが、この作業の繰り返しが実は情報発信の中ではもっとも大切なことの一つであり、最終的に大きな差を生み出す要素です。

この辺りの情報についてもたくさんの本が出ていますし、少しGoogleで検索するとたくさんの情報を得ることができます。

コンテンツの質と持続的なコンテンツ

情報発信についてこれまでに幾つか触れてきましたが経験上もっとも大切なことは、発信するコンテンツの「質」と「継続発信力」だと思います。

「コンテンツの質」というと目を奪われるような映像やデザインの美しさ、心を奪われる文章、関心が高い情報、お得な情報などと思われるかもしれませんが、それだけではなくそれぞれのコンテンツに一貫したメッセージやストーリーがあることが大切なのではないとか思います。

そして、定期的に、継続的に一貫したメッセージやストーリーが流れるコンテンツを絶え間なく同じリズムで供給し続けることがもっとも重要であると同時に実はもっとも難しいことなのではないかと思います。同じリズムというのは極端に言えば同じ時間帯という意味であり、たとえば、都市生活者の通勤時間やランチタイム、退社時間に当たる時間帯に毎日同じリズムで一貫したメッセージを感じさせる情報をFacebookやtwitterで発信するなど、ターゲットとなるユーザーの生活のリズムにその情報を見ることを組み込んでしまうのです。

また、Facebookやtwitterなどの双方向型の媒体であればなおさらですが、一つ一つの「いいね」や「シェア」、「リツイート」などにきちんと反応していくことも意外に大切ではないかと思います。

以上のことからもうお分かりだと思いますが、比較的簡単に情報発信という言葉を使われていますが、情報発信戦略をしっかり構築し、質の高いコンテンツ作りから実際の情報発信、そしてPDCAを踏まえた運用を行い、しっかりとした成果を意識した情報発信は片手間でできることではないと言えます。

同時にブログやSNSなど個人が無料で情報発信をできる媒体が広く利用されている現在社会であれば、それぞれの特性を理解し、上手に活用していくことで個人であっても低コストで効果の高い情報発信ができる可能性があるとも言え、どうせ情報発信をするのであればぜひきちんと勉強して、自分が費やした時間が無駄にならないようにしてほしいと思います。


マーケティングの基本的な考え方を理解する

地域おこし活動では一次産業製品に関わることも多く、そのため一次産業製品を加工した特産品などの物販に関わることが多いことからマーケティングの基本的な考え方を理解しておくことに損はないと思います。
マーケティングといっても難しいマーケティング書を読破しなさいということではなく、最低限の部分を抑えておけば十分ではないかと思います。

たとえば、情報発信のところでお話ししたことの繰り返しですが販売しようとしている商品・サービスの「ターゲット」はどのような地域に住んでいる方で、年齢層や家族構成、嗜好や生活パターンなどはどんなものかをイメージすることはその商品やサービスの「価値」を定義する上でとても大切です。

同時にターゲットを明確にすることは対象となる方がどの程度の人数いるのかを理解することに繋がることから想定される事業規模を把握することも繋がり、事業計画の策定上も非常に重要になります。

また、その商品・サービスの価値を相対的・主観的に定義することがとても大切になりますが、それはその商品・サービスの料金設定へと繋がり、料金設定をすることで上記の事業規模の正確な算出に役立つと同時に、どの程度の投資を許容できるか、事業として成り立つかの判断にも繋がってくる非常に重要な要素になります。

さらに上記で定義したターゲットや商品・サービスの価値を踏まえたブランド計画、PRプランを考えることも大切です。
たとえば、高付加価値の商品・サービスを富裕層に提供することを狙う場合にはパンフレット一つをとってもA4の普通紙の印刷ではなく、厚手の重厚感のある用紙を用い、洗練されたデザインにすべきでしょうし、富裕層の目に触れる機会が多い媒体や場所で集中してPR活動を行うべきです。なぜならそれらすべてがブランドイメージを作り、商品・サービスの価値を維持・向上させるからです。

マーケティングは幅が広く、情報発信・PRなどもその一度であるとも言えるため、いろいろなことを勉強しなければならないと考え、複雑に考えてしまう余り結局手が出せない方もいると思いますが、究極は「誰に」「どのような価値」を提供するか、その誰かに一番訴えることができる「媒体」や「表現」は何か、そして、その「表現」をブランドとして大切に守らなけれなならないという点を抑えれば大きく間違うことはないと思います。

上記を実行していく上で重要なことは外の世界との接点を多く持ち、いろいろなタイプの人のニーズの形を理解すると同時に、直接競合しないものも含め他の商品・サービスを幅広く知ることです。
この意味からも地域おこし協力隊として都心部から地方都市まで様々な地域に足を運ぶ機会となると特産品の販売イベントなどに積極的に参加することは非常に有益ではないかと思います。
実際、私がお話をお聞かせいただいた隊員の中でも特産品イベントに皆勤賞で参加されている方もいれば、全く参加されていない方もおり、かなり温度差があるように感じました。

マーケティングについて学ぶ機会はたくさんあるためここではこれ以上のことには触れませんが、せっかく地域おこし協力隊という様々な挑戦機会がある仕事をする機会を得たわけですから、その機会を最大活用し学べることは学び、試せることは試していくという試みの一つとしてマーケティングを勉強し、その知識を地域おこし活動の中で活かして行くのも有意義ではないでしょうか。

なお、最近偶然手に取った「差別化するストーリーの描き方(PHP 高橋宣行著)」という本をご紹介したいと思います。
本書籍は、新しい価値を生み出すコンセプトメイキングの手法について書かれた本ですがマーケティングプランニングの基本的な要素を含まれているだけでなく実践的な形で非常にわかりやすく書かれているおり、地域おこし協力隊として地域に新しい価値を生み出すことに挑戦している方であれば一読の価値があるかもしれません。


最後に

以上、今回は情報発信について特に注意すべき点についてポイントのみを簡単に触れてきましたが、皆さんもご存知の通り情報発信には、マーケティング・PR・映像などのクリエイティブデザイン・コピーライティングなどなどそれぞれ単品で本が書けるくらい奥が深いものです。そして、様々な知識や技術が駆使された多くの情報が社会に溢れているためちょっとやそっとの情報発信ではなかなか人々の目に止まらないのが現状であるということです。

それが本文でお話をした「片手間でできることではない」ということにつながってくるのですが、だからと言って隊員個人個人の情報発信をやめなさいと言っているのではなく、どうせやるなら少しでも効果が出るようにきちんと基礎的な部分は勉強した上で行いましょうということです。

しかしながら、実際の運用を考えると個人として地域おこし活動をしながらしっかりと計画された情報発信をすることは相当難しいのではないかと思われ、現実的にはチームを組んで行うべきだと思います。

具体的にはPRや広報の経験やクリエイティブ製作・コピーライティングの経験のある方を新規で採用し、複数の隊員の個々の活動の発信戦略を組み立て、情報発信を実際に行うことをミッションとする隊員として配置するのも良いと思います。
マーケティング・情報発信・PRなどの業務は自治体が苦手とする分野の一つではないかと思います。さらにこれだけインターネット・SNSなどの個人情報発信を支援するメディアが増えると単にSNSのサイトに情報を載せることを情報発信・PRだと考えている方も少なくないと思います。だからこそ、地域おこし協力隊としてPR・広報の専門家を採用し、退任後は自治体全体のPR・広報を任せるという方法も一つではないかと思います。


最後に一点お願いです。

現在昨年に引き続き2017年地域おこし協力隊向けアンケートを実施しています。

これまでに全16回となっている本ブログ「地域おこし協力隊の仕事」も昨年多くの方にご協力いただいたアンケートの結果が非常に重要なインプットとなっております。

アンケートは現役の隊員、任期満了された隊員、途中退任された隊員の皆さんが対象になります。
皆さんの厳しい現状を正しく社会に伝えるため、皆さんが経験から学んだ隊員活動をよりよくするために取り組まれていること、後輩隊員へのアドバイス、制度・受け入れ態勢をよりよくするためのヒントなどを共有いただけないでしょうか。

アンケートは下記の「アンケートに協力する」ボタンをクリックいただくことでスタートします。

ご協力のほど何卒宜しくお願い致します。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

下記をクリックしてアンケートを開始!

アンケートに協力する

アンケートの結果を見る!

リアルタイム集計結果を見る

本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

講師・研修などのご依頼は下記までお気軽にお問い合わせください。
お電話:080-4170-2703
メール:kota.ishibashi@visualization-labo.com
その他会社情報などの詳細についてはこちらをご覧ください。
また、facebookやtwitterにおいても情報発信しておりますのでご関心の方はこちらの公式facebookページもしくはこちらの公式twitterページをご覧ください。

皆さんの意見を聞かせください

地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
皆さんのご意見・ご感想などなんでも結構です。多くのコメントをいただき、本サイトが地域おこし協力隊のノウハウ蓄積・事例共有の場の一つになれば幸いです。