地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


先進自治体に学ぶ制度を有効活用する方法② 〜地域おこしのステップ〜

 
 

今回多くの自治体職員の皆さんにご協力をいただき、地域おこし協力隊という視点でお話しをお聞きしてきましたが、その話を聞いている中で地域おこしにはステップがあるのではないかと思うようになりました。

つまり、いきなり何もない状況から地域おこしで成果を求めることには無理があり、一つ一つしっかりと時間をかけてブロックを積み上げるように進めることが大切なのではないかということです。

ということで、今回はそのステップについてまとめた内容をご紹介したいと思います。

現在約900の自治体で協力隊を受け入れており、一自治体に一人の担当者がいるとしても900名の担当者がいることになり、それぞれに地域の歴史、地域を取り巻く環境、組織文化、地域住民の方々との関係など千差万別だと思いますが、それでも、受け入れ担当職員の皆さんが地域住民・役場・協力隊の三者がハッピーになれるような制度活用の一助になれば幸いです。

なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。


*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

ステップ1:人が集まる場を作ること

地域住民主導で地域のあるべき姿を描いていく上で地域住民が自分事として地域を考えることが求められますが、人口が極端に減少し、高齢化が進んだ地域においてまず求められることは地域を新しい視点で見ることができる「人」、行動力のあり物事を変えていける「人」、人を集める発信力がある「人」ではないでしょうか。
そして、その新しい視点に触れることを通して地域の人々が自分たちの身の回りにある「美しいものを美しいと感じる」意識を取り戻し、そのプロセスの積み重ねを通して自分たちが生まれ育った地域に対する「誇り」を取り戻し、自分たちが住む地域の未来を自分ごととして捉えることができるようになるのではないでしょうか。

そのため、最も厳しい環境にある地域(たとえば、限界集落を通り越した消滅寸前の最も厳しい環境にある町村)ほど「地域おこし」としてまず求められることは、この「人」が集まる「場」を作ることではないかと思います。
そもそも人が少ないため動ける人が限られているこの段階においては雇用などにより人を外部から呼び込むことは難しいことから、地域おこし協力隊や移住・定住促進施策により半強制的に人を入れ、まずは地域住民の日常の生活の姿を示していくことを通して繋がりの中で生活をすることの喜びやその地域に住む「人」のライフスタイルをしっかりと発信していくことが大切ではないかと思います。
移住・定住施策は多くの自治体で行っていますが、移住してくれるなら誰でも良いという形で行われていることが多い印象を持っていますが、単に移住者が入ってきても何も起きません。
大切なことはその地域の「ライフスタイル」に関心を持った人を集めること、そして、その人たちが集まれる「場所」作りが大切であり、その「ライフスタイル」を積極的に、そして、背伸びをせず身の丈のありのままの姿で発信していくことが重要だと思います。

この段階では地域おこし協力隊の活躍の幅は広く、地域おこしを中核的におこなう人材として、そこに住む高齢者などの支援をしながら、その地区で実際に生活をすると同時にその生活を積極的に発信していくことで、さらにその生活に共感する人を呼び込むことで「人が集まる場づくり」に大いに貢献することができると思います。
別な言い方をすれば、その地域のライフスタイルに魅かれ、共感してくれる人、そして、地域住民と協力してそのライフスタイルを発信していける人を見極め、協力隊として採用することが大切ではないかと思います。また、この観点で言えば、そこに定住する意思を強く持っている人、つまり、それくらいその地域のライフスタイルに魅かれている人であることが非常に大切な要素になってくると思います。

これはいわゆるコミュニティー型の地域おこし協力隊の活用になると思いますが当初私はこの考え方に非常に懐疑的でした。
「山里深い非常に不便な地域の生活に憧れて人が集まってくることなんてあるのか?」、「そういう人がいたとしても非常に限定的ではないか?」と思っていました。そして、事実そういう人はかなり限定的です。しかし、現段階ではそれくらい熱狂的なファンを獲得することが大切であり、熱狂的であるからこそ発信力も強いということに他ならないのです。
このことは、ある地域において、その地域に住む人々の暮らしに憧れ、その地域に移住したいと思っている人がとても多く、そのため希望する方々に提供する住宅の供給が追いつかないことから移住を待ってもらっている状況があるというお話を伺いましたが、これがまさに人は地域に惹かれるのではなく、その地域に住む人々およびそのライフスタイルに惹かれるということを非常によく表していると思います。

しかし、一方で以前もお話しした通りコミュニティー型の活動を行う隊員はその活動自体が任期終了後の仕事に繋がることが少ないため、情報発信もしつつ、個のタレントで稼げるクリエイターなどを採用するなど任期終了後に十分な配慮をした募集が必要だと思います。


ステップ2:人おこし

「人が集まる場づくり」の次のステップは「人おこし」だと思います。

それは、集まってくる人との繋がりを大切にし、それぞれの才能やもっているものを皆で活かすことで地域の課題を解決したり、目指すべき将来の地域の姿に近づくための計画を推進することですが、そのためには集落の中核となり自治体から公社・農協など関連する組織を繋げ、物事を一つにまとめ、形にできる人材を見出し、育てることが必要になります。

その人材は地域おこし協力隊かもしれないし、もともと地域にいる地元住民かもしれません。また、移住者かもしれないですが、大切なことは先述したとおりそこで手を挙げた人に成長するための挑戦の機会を提供する仕組み、その成功を支援する環境・仕組みを作ることであり、それが行政機関の主要な仕事になってくるのではないかと思います。

地域おこし協力隊の活用という観点で言えばこれはまさにミッション型で隊員を募集し、地域の課題を解決するという挑戦機会を提供することで隊員を地域の中核人材として育てることだと思います。


ステップ3:業おこし

そして、最終的に組織の垣根を超えて地域の人々が協力し「業おこし」を目指します。

それは、地域資源を活用した上で圧倒的な価値を創出すること、そして安定供給できる仕組みを作ることであり、最終的にその価値の産業化を目指すことだと思います。

地域のゴール、地域おこしのあるべき姿などの議論がなされるときに何をゴールとすべきかということに対しては色々な意見があると思います。それは究極的に言えば一人一人の住民が幸せに暮らせる地域環境づくりだと思いますが、それはあくまでも定性的なゴールであり、定量的なゴールとして、そして、定性的なゴールを実現させるための手段として最低でも自分の住む地域で提供される行政サービスを賄うだけの税収を得ることが重要だと思います。
その税収を得るための手段として大きく分けて、個人の収入からの所得税、企業の収益からの法人税、地域内の固定資産からの固定資産税に分けられますが、これらを全てを底上げしていくためには地域内の企業の収益力が向上し、法人税が増加すると共に増加した収益を投資をしてもらうことで固定資産税を増やすこと、さらにその収益が従業員に還元され、個人の所得が向上することにより所得税が増えるという形がもっとも効率が良く、そのため地域企業の収益力向上や新たな事業の創出となる創業支援などの試み、つまり地域おこしのゴールとして「業おこし」は避けられないことだと思います。

しかし、ステップ2とステップ3の間には大きな溝があり、そこに到達するためには長期間の投資とそれを実現させるための周到な計画、担い手である中核人材の育成のために先述の事例のように人材を育てることを意識した組織や仕組みを作ることや育てるための挑戦機会を提供し続けることが重要になりますが、それに加えてこれまでにない形で事業創出・拡大を支援する仕組み(特に融資ではなく投資としての資金調達仕組みと高いレベルでの投資帯効果の追求)が求められると思います。

ただ、一つ言えることは何事も「人」が為すことであり、その人をしっかりと育て、支援し、見守り環境を作り、それを維持し続けること、そして、現場に満足せずにより良い環境になるように日々改善・改良を繰り返すことの延長線上にゴールがあるということだと思います。


最後に

今回は私が地域おこし協力隊の調査をする中で感じた地域おこしのステップについて触れてきましたが、現時点では多くの地域でステップ1もしくはステップ2で頑張っておられ、ステップ3に到達している地域は私が知る限りありません。

地域で雇用を生み出すくらいの事業を成功させることはそれだけをとても難しいことですが、それに加え地方では事業を大きくするための様々なリソースが十分とは言えず、率直にいえば現在の環境では宝くじが当たるくらいの確率でしか起こり得ないことではないかと思います。

そんな環境を変えるための鍵は地方都市において最も力を持つ地方自治体にあると個人的には思っており、その人材、予算、信用力を駆使し、人・もの・お金など事業支援・事業創出に必要な資源を引っ張ってくることが重要だと思います。

最後に一点お願いです。

現在昨年に引き続き2017年地域おこし協力隊向けアンケートを実施しています。
これまでに全20回となっている本ブログ「地域おこし協力隊の仕事」も昨年多くの方にご協力いただいたアンケートの結果が非常に重要なインプットとなっております。

アンケートは現役の隊員、任期満了された隊員、途中退任された隊員の皆さんが対象になります。
今回のブログの内容は主に受け入れ自治体の方向けに内容となりますが、ぜひ貴地域で活躍されている協力隊の皆さんにご紹介をいただければ幸いです。

アンケートは下記の「アンケートに協力する」ボタンをクリックいただくことでスタートします。
ご協力のほど何卒宜しくお願い致します。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

下記をクリックしてアンケートを開始!

アンケートに協力する

アンケートの結果を見る!

リアルタイム集計結果を見る

本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

講師・研修などのご依頼は下記までお気軽にお問い合わせください。
お電話:080-4170-2703
メール:kota.ishibashi@visualization-labo.com
その他会社情報などの詳細についてはこちらをご覧ください。
また、facebookやtwitterにおいても情報発信しておりますのでご関心の方はこちらの公式facebookページもしくはこちらの公式twitterページをご覧ください。

皆さんの意見を聞かせください

地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
皆さんのご意見・ご感想などなんでも結構です。多くのコメントをいただき、本サイトが地域おこし協力隊のノウハウ蓄積・事例共有の場の一つになれば幸いです。