地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


受け入れ自治体の現状①

 
 

今回で第十一回となる「地域おこし協力隊の仕事」ですが、今回から2回に渡り受け入れ態勢の不備や協力隊の処遇、活動費の話などネガティブな話がよく聞かれます受け入れ自治体および受け入れ担当職員の皆さんを取り巻く環境についてご紹介致します。


なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

また、私自身は地方自治体で仕事をした経験があるわけではなく、あくまでも今回の調査の中でお話をお聞かせいただいた自治体職員のみなさんの話と一般的に公開・公表されている情報をベースにしていることをご留意ください。
また、あくまでも地域おこし協力隊に関わる職員の皆さんの話であるため自治体全般に対するものではないことも合わせてご留意いただければ幸いです。


今回のブログは、特に現在隊員のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんが受け入れ自治体の実態を正しく理解することをとおして自治体職員の方々との相互理解を深め、両者が信頼関係を構築すると同時に、協力しながらより良い地域おこし活動を行うことができる環境作りを行っていく一助になればと思います。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

自治体職員を取り巻く環境

これまでもところどころで触れてきましたが、自治体職員のみなさんは自治体特有の環境の中で仕事をされている様子が垣間見られましたが、ここでは、実際に職員の方々からお聞きしたお話をベースにその環境について少し深堀してみたいと思います。

複数業務の兼務が当たり前の過酷な職場環境

平成17年度から実施されている集中改革プランの影響か地域おこし協力隊を受け入れる担当職員は重なる兼務のため身動きが取れなくなっており、地域おこし協力隊をきちんと見られない状況になっているケースが散見されました。
その背景には、集中改革プランの推進により人員削減は進んだものの本来は同時に行われるべき業務整理が追いついていないケースや合併市において合併後の業務整理がしっかり行われず単に新しい組織階層を作っただけの状況となっているケースなどがあり、いずれにせよ業務効率が低い上に冗長かつ権限が分断されたプロセスになっている様子が伺え、結果的に工数が増えてしまっている状況を垣間見ることができました。
また、集中改革プランの推進の一環として大部屋主義を標榜し、積極的に組織統合を行った自治体も少なくないとのこと、そのような自治体では建設課と観光課、商工課が全て一緒になっているなど課としても複数の役割を担っていることから尚更担当職員としての兼務業務が増えるという事態に陥っている自治体も見られました。

※集中改革プラン
相模原市役所HP引用
「集中改革プラン」とは、平成17年3月29日付け総務事務次官通知「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(新地方行革指針)に基づき、地方公共団体が行政改革の具体的な取組を集中的に実施するために策定した、平成17年度を起点として平成21年度までの具体的な取組みをわかりやすく明示した計画です。
具体的には、次の7つの項目が取組み項目として掲げられています。
・事務事業の再編・整理、廃止・統合
・民間委託等の推進
・定員管理の適正化
・給与の適正化
・第三セクターの見直し
・経費節減の財政効果
・地方公営企業の経営改革
http://www.soumu.go.jp/iken/100512_1.html
http://www.soumu.go.jp/iken/kazu.html

複数業務の兼務が当たり前の職場環境が招く地域おこし協力隊活動への弊害

担当職員の複数業務兼務が協力隊の活動に与える影響として、隊員の受け入れ態勢の未整備や隊員活動のサポート不足があります。
あまりにも多くの業務を一人の担当者が行っているがゆえに必然的にその担当者が一つ一つの業務に割ける時間が少なくなり、数ある業務の一つである地域おこし協力隊のサポート業務に対して割ける時間も自ずと少なくなる傾向にあるようです。

その結果、たとえば導入時の検討が十分に行われず、あるべき地域おこし活動が定義されておらず活動内容やそれに紐づく募集人材像なども不明確な状態で導入を進めてしまうことも少なくなく、そのため採用プロセスから募集要項まで他の自治体の事例をそのまま真似していることから実質的な活動が存在しないだけでなく受け入れ態勢の整備も不十分となり、大きな期待と大志を持って着任した隊員を大いに失望させる最初の一歩になっている様子が伺えました。

さらに、隊員の着任後も地理感のない隊員を十分にサポートすることができず放置状態になる傾向が強く、本来は地域から期待される事がある中で活動をスタートすべき隊員が自ら一人で地域を開拓し、一人でその地域のあり方を考えながら活動していく事も少なくなく、そのため地域住民から不審がられ、地域住民を巻き込んだ地域おこし活動がなかなか進まないという本末転倒な状況となり、疲弊していく隊員や心を壊す隊員も少なからずおられました。また、そのような自治体や地域住民に失望し、地域おこし自体の可能性を諦めてしまう隊員も少なからずおられました。

このような状況では、総じて隊員の活動が地域おこしに繋がらないだけでなく、着任した隊員の将来の生業にも繋がらないことから極端なケースではその隊員の人生を壊すことに繋がるなど協力隊個人の人生に対して非常に深刻な影響を与えていると言えます。

強い縦割り組織と縦社会

自治体職員の方々にお話をお聞きする中で皆さんが口を揃えておっしゃっていたことは縦割り意識がとても強いということでした。おそらく以前は行政機関に対する地域住民のニーズを明確に分類することができたことや不正防止などの観点から縦に業務・組織・予算を分けるという縦割りの形になったのではないかと考えられますが、地域おこしという観点で見てみるとそれが制約になることも多いようです。

たとえば、特産品開発を見ても特産品の生産に関わる農林課、商品開発に関わる商工課・保険衛生課、PRなどに関わる広報課・観光課など多くの課が関わることが求められる中、意思決定や投資、事業推進の観点から見ても縦割り組織は大きな弊害となっている現実があります。

また、強い縦社会についても上記同様、不正防止の観点や税金を預かって行われる行政サービスに対する強い監督機能の必要性から絶対とも言える強い縦の指揮命令系統が作られたと考えられますが、一方で意思決定プロセスが冗長化することも少なくなく、そのため決裁工数が増加しスピード感を持った意思決定やリスクをとった判断がむずかしくなるという傾向があります。さらに強すぎる縦社会は、上の顔色を伺いながら仕事をする組織文化を醸成することが多く、その結果事なかれ主義が横行し、現場の想像力や創意工夫する意識が減退する傾向もあります。

その結果、前例がある施策を推進する方向に力が作用するため施策が保守的になる傾向が強く、「変化」に対して強い抑止力がかかる組織構造になっているとも言え、多くの変化が求められる「地域おこし活動」においてはブレーキとして働く傾向が強いのではないでしょうか。

強い縦割り組織と縦社会が招く地域おこし協力隊活動への弊害

自治体の縦割り組織・縦社会文化が生み出す影響としては、地域おこし活動の幅に制限をかけてしまうということがあると思います。
先述した通り地域おこし活動は往々にして組織横断的な活動が求められることが多いため、地域おこし活動を担当し地域おこし協力隊をサポートする職員には、自治体組織に横串をさす意識が求められますが、縦割り組織文化が強い組織において横串をさすことがなかなか出来ず、その結果地域おこし活動や地域おこし協力隊の活動幅が制限されることが多い印象を受けました。

その表れの一つが、第九回「活動状況②」における「企画・提案の実施状況」でもお話しした通り、いくら協力隊から地域おこしに関する提案を行っても受け入れてもらえないという状況や上記のように隊員が放置されるという状況なのではないかと思われます。

また、自治体の強い縦社会文化が上司を煩わせたくないと考える”事なかれ主義”を生み出し、自分が担当している間は地域おこし協力隊に波風を立てて欲しくないという意識から協力隊の活動を制約し、決められたルーチン業務に押し込もうとする意識が働くことに繋がるだけでなく、地域おこしに対して強い思いがある隊員の前向きな気持ちを活かすことができず、職員や自治体組織そのものに対する失望感を増大させるという結果になったケースも少なからず見られました。

つまり、縦割り組織・縦社会文化が地域おこし協力隊業務を担当する職員の孤立と事なかれ主義意識を生み出し、その結果担当者が独自で自分にとって都合の良い判断をするようになることで結果的に地域おこし活動や地域おこし協力隊の活動が制約されるという状況を生み出していると言えるのではないでしょうか。

2重構造(本庁と支所の関係)

こちらもこれまでに何度かお話してきましたが合併を行った市では、合併町村の組織を自治センターや支所として一定の自治機能を備えた状態で残しているケースが少なからず見られました。
このような自治体においては、支所の担当職員があげた稟議は支所内で承認された後、さらに本庁に行き、本庁内での稟議プロセスを経由するという二重構造となるため工数が増加する傾向が見られました。さらに、責任が所在が不明確になる傾向も見られ、誰も責任を取らないことから課題が放置される傾向が強い様子も伺えました。また、このように意思決定工数が多く何をするにも時間がかかる上に責任の所在が不明確であることから組織全体、特に現場のモチベーション低下の要因になっている様子も伺えました。

今回支所で協力隊を預かる職員の皆さんにお話をお聞きする機会もありましたが、ほとんど権限を与えられていない状況下で本庁から多くの事務作業が依頼されるという本庁の下請け業者のようになっている上に、恒常的に複数業務の兼務状況になっていることから預かっている隊員の面倒をきちんと見ることができないという状況に忸怩たる思いでおられる様子も伺えました。また、そのような環境で仕事をしているため自治体職員としての誇りも失いつつあるとおっしゃっておられ、隊員を受け入れる職員自身が何かしたくてもそれができるような環境を与えられていないという現実を垣間見ることができました。

また、ある職員の方が別れ際に渡してくれた新聞記事の切り抜きには「今後10年間の行財政改革もまた、“削ること”によって負の側面をさらに助長するのではなく、むしろ行政職員がプライドを持って仕事をするための道筋をつけることにこそ重きをおくべきではないだろうか。」という一文があり、その方の忸怩たる思いが非常によく表れていると同時に現在起きている自治体における様々な問題も実は行政職員がプライドをもって仕事ができる環境を整えていくことで解決されていくのではないかと感じました。

つまり、協力隊が思うような活動ができない背景には、実は協力隊を預かる担当職員自身が思うような仕事がなかなかできないという現実もあるということです。

2重構造(本庁と支所の関係)が招く地域おこし協力隊活動への弊害

合併した町村を自治センターや支所という名前で一定の自治機能を持たせ残しているケースでは、地域おこし協力隊の運営においても階層構造になっていることが多く、企画・採用は本庁で活動の面倒は支所でという形で協力隊の運営が分断されて様子が伺えました。そのため、現場で求める人材像と実際に採用された人材との間に齟齬が発生することが少なからずあり、そのことがゆくゆくの地域おこし協力隊運営の中で隊員・職員間の信頼関係の醸成を阻んでいる遠因に一つになっているような気がします。
また、もっとも直接的な弊害は、何をするにも本庁にお伺いを立てなければならない冗長な手続きと縦に長い決裁プロセスのためスピード感を持った判断ができず、例えばそれが活動費の活用に対する柔軟性や迅速性を奪うということではないかと思います。

大きな自治体が必ずしも合併自治体を指すとは限りませんが、隊員向けのアンケートにおける下記のようなコメントからも予算管理や事業提案の観点から大きな自治体では柔軟性やスピード感を持った運用ができないと感じている様子が伺え、規模が大きな自治体より規模が小さい自治体の方が活動しやすいと考えている隊員が少なからずおられることから、実はその背景には上述したような合併などにより冗長な組織構造を持った自治体組織が生み出す弊害があるのかもしれません。

「大きな自治体への参画だと、予算や役場内での事業提案などは皆無です。余程の担当者がいない限り無理でしょう。できるだけ小さな自治体への参画をオススメします。ただ、工夫や自らの行動は必要以上に問われます。」
「小さな自治体での活動をお勧めします。もちろん人間関係等の難しさはありますが、それ以上に予算管理や起案のしやすさに決裁権者との距離の近さは3年間で成し遂げるためにも大きな歩みになりますよ。」

また、これはあくまでもお話をお聞かせいただいた一部の自治体もしくは特定の職員の方から私が受けた個人的な印象ですが、規模の大きな自治体より小さい自治体の方が制度や他の地域の事例について積極的かつ柔軟に実務レベルで勉強している様子が伺え、そのため規模の小さい自治体の職員の方が多くの自治体がつまずくが多い地域おこし協力隊の問題についてもよくご存知であり、その備えについてもしっかり考えておられる印象を持ちました。

しかし、判断に時間がかけることは、機会損失を招くというデメリットの裏返しとして複数の目でしっかりと事業内容を精査しているというメリットもあり、実際には稟議・提案内容や組織構成・プロセスにもよるところが大きいことから、判断に時間をかけていることが悪く、そうでない方が良いとは一概には言えません。

また、規模の大きい自治体で稟議プロセスに時間がかかる傾向が強いということは規模の小さい自治体より仕組みやルールの観点の整備が進んでいると捉えることもできます。
さらに規模の小さい自治体(町村)にはそれなりに活動をしにくくさせる要因もあることから一概に規模の大小により活動しやすさの是非があるということではなく、大切なことは、効果や実行性・実現性の観点からその自治体の実情にあった提案かどうかをきちんと、そして効率的に判断できるプロセスになっているかどうかかではないでしょうか。

最後に

今回は、ここから2回に渡りお伝えしていく「受け入れ自治体の現状」の前編ということで、受け入れ自治体の職員の皆さんを取り巻く環境の一部として複数業務の兼務で首も回らない状況であること、縦割り組織・縦社会文化において思ったような仕事ができない環境であること、さらには合併市によく見られる本庁・支所の関係が生み出す元請け下請け構造について、そしてそれぞれの現状が地域おこし協力隊の運営に与える影響についてご紹介しました。

様々なことが言われる地域おこし協力隊ですが、協力隊目線のものが多く、地域おこし協力隊を受け入れる自治体の状況を伝えているものがほとんどなかったことも今回私が地域おこし協力隊の調査をしたいと考えた理由の一つです。
また、地域おこし協力隊の運営は、当たり前ですが隊員と受け入れ自治体の職員とで構成されていますが、受け入れ自治体の職員は自治体という組織に所属した一構成員であることからその自治体における仕事の仕方、組織、文化に大いに影響されると考えるのは自然のことだと思います。

また、協力隊の皆さんとお話をしていく中で協力隊の皆さんがあまりにも自治体職員の皆さんの状況について知識がないことも職員の皆さんに直接取材し地域おこし協力隊のこと以外にもあれこれとお聞きした理由の一つです。
受け入れ自治体の職員と協力隊は言わば同じ船に乗った仲間であるべきです。そう考えるとそもそも自分が乗っている船がどのような仕組みで動いているのか、仲間がどんな思いで仕事をしているのかを知らないでお互いの力を活かした協働は難しいと思います。

そんな思いを込めて、今回はあえて協力隊の皆さんの読んでほしい内容であるとお伝えした次第です。
もちろん、これまでお伝えしてきたように協力隊の皆さんが難しい環境で難しい仕事をされており、「そんな余裕あるか!」と厳しいご意見があることも理解しております。しかし、物事を動かすときにはどうしても人を動かすことが大切になります。そして、その人を動かすためには、その人のことを理解しようとする姿勢や気持ちが大事になると個人的には思います。
自治体職員のみなさんも一住民であり、自治体という存在は地域おこしをする上で非常に重要な役割を果たすことはいうまでもありません。ぜひ、同じ船に乗って大きな成果をあげていただければと思います。

以上、今回は「受け入れ自治体の現状」の前編ということでお伝えしてきましたが、次回はその後編として頻繁に行われる人事異動、地域住民・議会の目についてお伝えできればと思います。

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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