地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


自由度の高い制度ゆえの課題

 

制度・導入状況」にて触れたとおり、地域おこし協力隊制度の大きな特徴はその自由度の高さです。
そして、その自由度の高さが起因し、本制度は薬にも毒にもなっているというお話をしました。

今回は、本制度の自由度の高さがどのような形で毒となり薬になっているか、その現状についてご紹介したいと思います。

自由度の高さを嫌う自治体

今回地域おこし協力隊を受け入れている自治体職員の皆さんにお話を伺う中で印象的だったことは、多くの方々が自由度が高すぎてかえって困るとおっしゃっていたことです。

そう感じる背景に、これまでの国や都道府県からの交付税が基本的に厳密に使途や手順が定義されており、その状況に慣れてしまっているためかその他の要因があるのか実際のところは分かりませんが、その自由度の高さを活かし、どうすれば自分たちの地域のために制度を最大活用できるかを自分自身できちんと検討し、導入している自治体はごく一部であり、多くの自治体がその自由度の高さに困惑している様子が伺えました。

具体的な事例

次に制度の特徴である自由度の高さにより現場で起きている様々な問題について幾つか具体的な事例をご紹介したいと思います。

まず、ご紹介したいのは活動費運用に関する事例です。

地域おこし協力隊一人当たりに割り当てられる年間上限400万円の予算は特別交付税を財源とするものですが、兎角使途に制約があったり、手続きが煩雑になる傾向が強い特別交付税を財源とする活動費予算にもかかわらず、400万円を上限とすることおよび400万円のうち報酬に割り当てられる金額上限が決まっているだけで、それ以外の点については特段制約がありません。

より具体的な話をしましょう。

地域おこし協力隊の活動費について説明している資料に総務省から発出されている「地域おこし協力隊推進要綱」というものがあり、そこに以下のような記載があります。

(2)地域おこし協力隊員の活動に要する経費
地域おこし協力隊員の活動に要する経費については地域おこし協力隊員1人あたり400万円を上限(うち報償費等については200万円を上限、報償費等以外の活動に要する経費については200万円を上限)とする。ただし、地域協力活動に不可欠であり専門性の高いスキルや経験を有する地域おこし協力隊員又は辺地等の著しく交通条件等の悪い不便な地域における地域協力活動に従事する地域おこし協力隊員については、報償費等について250万円を上限とする。この場合においても、地域おこし協力隊員1人あたり400万円を上限とする。

また、必要経費の例として下記のような記載があります。

【必要経費の例】
・報償費等
・住居、活動用車両の借上費
・活動旅費等移動に要する経費
・作業道具・消耗品等に要する経費
・関係者間の調整・住民や関係者との意見交換会・活動報告会等に要する経費
・隊員の研修に要する経費
・定住に向けて必要となる研修・資格取得等に要する経費
・定住に向けて必要となる環境整備に要する経費
・外部アドバイザーの招へいに要する経費

上記引用の最後に記載がある「等」という点が気になりますが、上記を読む限りは「等」により全て括られており特段制約がないように読み取れます。
しかし、実際に受け入れ自治体の職員の方々にお話しを聞いていくと少なくとも現場の職員のみなさんはそうは感じていない様子が伺えました。

特に多く聞かれた具体的にケースに固定資産の購入があります。
たとえば、農機であったり、農作物の加工装置であったり、ときには自然体験プログラム用の器具など様々ですが、最終的に隊員が起業する場合にその物品が個人の資産となってしまう可能性がある物品については購入を許可しないケースが多く聞かれました。

では、制度上は特に制約がないように見えますが、なぜこのような物品は許可されないのでしょうか。
この点を直接総務省に確認してみたところ下記のような回答を得ました。

総務省の通達には固定資産となるものはNGであるというような記載はなく、さらに活動費の用途や支出方法については制約をかけておらず各自治体の判断とのこと。総務省としては活動費の付票として各自治体から内訳の報告を受けているとのことですが、集計等行っているわけではなく、明確には言えないが農機や土地などの固定資産が入っていても違和感はないとのこと。この考え方は活動費、起業のための経費共に共通しているとのこと。

では、都道府県はどう考えているのでしょうか。とある中部地方の県の地域おこし協力隊担当職員の方に問い合わせたところ下記のような回答を得ました。

活動費や起業のための経費については、県としても特に制限をかけておらず、総務省の考えと同様に各市町村の議会などの状況の許す範囲で活用するように伝えているとのこと。また、活動費の付票レベルの内訳について県でとりまとめ総務省に報告している。付票の記載レベルは各自治体でまちまちであり、詳しく書かれているところもあれば「起業関連費用」という形でひとくくりにされていることも多く、詳細は各市町村でないとわからない。ただ、公平公正な対応をベースに考えると任期満了後に一般の市民と同じになる隊員の個人の資産になるような目的で活動費を使用するということに理解を得ることは難しいと想像する。

つまり、総務省も都道府県もどちらも特段制約をかけておらず自由なのですが、総務省の回答の中にある「各自治体の判断」や某県の回答にある「議会などの状況が許す範囲で」という点がポイントなります。
また、某県の地域おこし協力隊担当者の方の回答の後半にあります「ただ、公平公正な対応をベースに考えると任期満了後に一般の市民と同じになる隊員の個人の資産になるような目的で活動費を使用するということに理解を得ることは難しいと想像する。」という言葉が実態を良く表しているといえます。

もう一つ別な例として雇用形態についてご紹介しましょう。

活動費同様雇用形態、そして、それに紐づく手当や報酬体系も実は特に規定されておらず、制度上は受け入れ自治体の判断で決定することができます。

つまり、地域おこし協力隊というこれまでにない立場の職員が役場に入ってきているわけですから、新たに条例などを制定し新しい役職や雇用形態を制定することもできます。さらに特別交付税以外の財源から予算を拠出すれば隊員のスキルや経験をより一層考慮し地域おこし協力隊制度で規定されている報酬額以上の報酬を柔軟に提示することもできます。しかし、実態は、ほぼ全ての自治体が既存の雇用形態として存在する「非正規の臨時職員」もしくは「特別職」という形で雇用しており、その結果、既存の職員とは全く異なる活動は求められているにも関わらず雇用形態や処遇は、役場の定常業務を行う臨時職員や公営企業の管理者などに適用されることが多い特別職という状況となっているのが現状のようです。

つまり、雇用形態や処遇などについて制度上規定がないため結果的に役場内の他の職員や公営企業などの職員とのバランスを意識することになり、地域おこし協力隊の雇用形態や処遇を既存の職員の雇用形態のどれかに当てはめているという結果になっている様子が伺えました


制度としては非常に自由度が高く「地域おこし協力隊の可能性」でも触れたとおり、この自由度の高さにこそ大いなる可能性を感じていたわけですが、実際のそれを運用する現場では全ての議会や地域住民への説明責任を考慮するあまり、自由度の高さがほぼ活かされていない様子を見ることができます。

今回ご紹介した活動費や雇用形態以外でも特に起業を考えている隊員にとっては隊員活動が起業準備につながることも多く、そのため任期中の活動の様々なシーンで地域住民のやっかみや誹謗中傷にあっているという話もよく聞きます。

地域おこし協力隊が活躍する現場では、地域住民の目や既存職員とのバランスを考慮するあまりその制度の自由度は完全に奪われているだけでなく、明文化されたものがないため隊員から見るとその制約がどこから来ているか分からないため役場に不信感を生み出す大きな要因となるという弊害を生み出している様子が伺えました。さらに報酬を得ながら地域おこし活動に従事する地域おこし協力隊を地域住民がやっかみ、その活動を直接的・間接的に妨害することも多いと聞いており、制度上明確に定義されていないがゆえに見えないところで物事が決まっているという状況に協力隊、地域住民ともに不信感を募らせている様子が伺え、それが地域おこし活動の大きな弊害となっているという現実を見ることができました。

自治体と隊員の馴れ合い構造

また、別な視点でみれば自由度の高い制度であるため特段準備や検討をしなくとも隊員さえ採用すれば一人当たり年間400万円の交付税が交付される制度という見方をすることもできます。

そして、これがしっかりと地域おこしの計画も持たず受け入れ態勢を整えず、隊員に対する期待することや活動内容も不明確なまま安易に協力隊を導入する自治体を生み出す要因にもなっていると考えられます。

今回多くの協力隊の方の声を聞きましたが、着任しても地域おこしの担当者がいなかったり、受け入れ組織がないため放置されているという話や仕事がないだけでなく机もパソコンもないなどの声を多く聞きました。

自治体の受け入れ態勢についての具体的な声については改めてご紹介したいと思いますし、受け入れ自治体の職員の皆さんからお話をお聞きする中で見えてきたこのような状況になってしまう自治体側の状況についても別途ご紹介したいと思いますが、ここでお伝えしたいことは、このような安易な採用がやる気のある協力隊の気持ちを削ぐだけでなく、3年間という期間ではありますが、自分の人生をその地域のために尽くすことを決めた隊員の気持ちを裏切る行為であることです。

そして、何より自治体が隊員に期待しないということは本来報酬を受け取るということで発生する「義務」を隊員が負わないことを意味し、交付税欲しさに安易に協力隊を募集する自治体と期待されないことから「義務」もなく日々何もせずに過ごす隊員という全く緊張感のない馴れ合いの関係をここに見ることができます。

この状況は税金の無駄遣いであるだけでなく隊員自身も3年間を無駄に過ごすことで成長機会や勉強の機会を失う機会損失となることを意味し、これからの社会を支えていく世代の将来を潰していると捉えることもできます。


自治体の説明能力が成否を分かつ

ここまでは、制度の特徴である自由度の高さが生み出す弊害についてお話しをしてきましたが、同じ制度を活用していても、その特徴を含め積極的に制度を活用している自治体もありました。

たとえば、活動費の活用ですが、上記の固定資産の問題を補助金制度を新設することで解決した自治体がありました。

補助金の制度にすることできちんとした計画の策定や報告義務は発生しますが、お金の使途に制約はなくなります。

このような事例はまだ一部ではありますが、地域おこし協力隊制度が浸透し、共有される事例も多くなることからこれから確実に増えてくるのではないかと思います。

では、自由度を積極的に活かしている自治体とそうではない自治体の違いはなんなのでしょうか。

今回の調査を通して私が感じたことの一つに「説明能力」の違いであり、その「説明能力」を生み出すしっかりとした計画作りが行われているかどうかの違いがあるのではないかと思います。

地域おこし協力隊の活動費にしても雇用形態・処遇にしても制度上の制約は何もなく、制約を生み出しているのが地域の議会や住民の目であれば、議会や地域住民に地域おこし協力隊制度がどんな制度で、隊員がどのような活動を通して地域おこしや地域活性化に貢献していくのかを示す計画をきちんと地域住民に説明できれば良いわけです。

そのためには、地域住民とその地域の将来のあるべき姿を一緒に考え、イメージを共有したり、その実現のための手段についてもきちんと検討し、人・もの・お金など必要なものを揃えるなど、しっかりとした検討や目に見える行動が必要になりますが、制度の自由度を活かしている自治体とは結局そういう自治体だと感じました。

そして、その計画があるからこそ地域おこし協力隊が地域おこしのために行う様々な活動に免罪符が与えられ、地域住民などからの僻みややっかみ、誹謗中傷から隊員を守ることになるのだと思います。

役場の地域住民との新たな関係づくり

結局、役場と地域住民の日頃の関係づくりが非常に重要であるということです。

それは、役場が地域住民の下僕のように顔色を伺いながら言いなりになるような関係ではなく、一方的に地域住民の声を聞かずに地方行政を推進することでもなく、職員自身が地域の将来に対する熱い「思い」と地方行政のプロフェッショナルとしての「誇り」を持ち、地域住民とまっすぐに向き合い、地域のあり方を一緒に考えていくような関係ではないかと思います。

それは政治的のパワーバランスで物事を決定するのではなく、ビジョンとしての地域の目指す大義を中心に地域住民が一丸となる地域づくりを目指すことだと思います。

ある自治体の職員の方がおっしゃっていましたが、人口が増加し、景気も右肩上がりだった頃には地域住民に対する至れり尽くせりの対応をしてきた結果、なんでも役場に頼る現在の地域住民との関係ができてしまったという話がありました。

しかし、急速に人口が減少し、景気状況も横ばいの状況の中ではこれまでにように至れり尽くせりの対応ができないことは自明であり、今まさに役場と地域住民との新しい関係づくりが求められているとも考えられ、地域おこし協力隊の導入がそのきっかけになっていると捉えることもできるのではないでしょうか。

そういう意味では、地域おこし協力隊は地域の中核人材ということ以上に地域住民と役場の新しい関係づくりのキーマンになる可能性も秘めていると言えるのではないでしょうか。

以上、今回は地域おこし協力隊制度の大きな特徴である自由度の高さがどんな形で毒になり薬になっているかご紹介しましたが、次回はより深くその実態をお伝えすべく、まずは「成り手の現状」といいうことでどんな方々が隊員として活躍されているのか、その悩みなどについてご紹介したいと思います。

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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