地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


活動状況②

 
 

今回が第九回となる「地域おこし協力隊の仕事」ですが、「地域おこし協力隊の現状」シリーズの6回目として、そして、二部構成となっている地域おこし協力隊の皆さんの活動状況の後編として、今回は隊員の活動成果の一つと考えられる企画・提案状況やその内容、地域おこし活動の肝とも言える地域住民との関係づくり、さらには休日の過ごし方などについてご紹介いたします。


なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

さらに前回同様、今回のブログも特に現在隊員を受け入れている自治体の職員の皆さんやこれから隊員を募集することを考えておられる自治体の首長を始め、関係者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんがどのような背景を持ち、どのような思いで隊員に応募してきたか、活動中に感じている不安はどんなものかなど隊員の皆さんの現状について受け入れ自治体の皆さんに知っていただくことで、隊員の皆さんへの理解を深めていただくと同時に地域おこし協力隊の成功の必須要件である隊員と受け入れ自治体および職員との間の信頼関係を築く一助になれば幸いです。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

企画・提案の実施状況

アンケートの中で地域おこしに関する企画・提案の実施状況についてもお聞きしていますが、8割近くの方が地域おこしに関する何かしらの企画や提案を行っていることがわかりました。

また、実際に行った企画・提案内容を自由回答方式でお聞きしたところ自治体のPR・プロデュースに関する企画提案が最も多く全体の3割弱を占めており、次に観光振興に関する企画提案が続き2割弱を占めるという結果になりました。

この結果は、前回記事である第八回「活動状況①」で触れました活動内容やミッションが不明確なためやることがなく結果的に自治体のPR活動がメインとなってしまう隊員の話を踏まえて考えると、活動内容やミッションが不明確で放置されている隊員が非常に多いことを示しているとも言え、とても残念な気持ちになります。

また、上記の「その他」の中身を見てみると下記のような意見もあり、様々なことをトライ済みの自治体における新しい企画・提案そのものの難しさや受け入れてもらうことの難しさが伝わってきます。

「6次産業や企画提案などを積極的に行ったが断られ続けた」
「赴任当初に思いつく事、振興事業は大抵すでに試し済みである。得意げに口にしていると恥をかくし、信用度を低下させるので注意」

隊員の皆さんへの直接取材の中でも、同様に提案をし続けたが断られ続けたという話はお聞きすることがありましたが、その背景には自治体の担当職員の知識・経験・裁量不足に起因し隊員の企画および提案の意図や効果を理解することができないケースや単純に年齢や経験などに対する偏見によりフラットな形で企画や提案を受け止められないケースなどもあれば、一方で隊員の経験・勉強不足という隊員自身の知識・経験不足から提案自体がありきたりであることや経済性や地域性など様々な観点から実現性に乏しいケース、さらには隊員の活動姿勢自体に問題があることなど様々なケースがある様子も伺えました。

「地域おこし」を何と捉えるかで企画・提案の困難度は大きく変わってきますが、仮に「地域おこし」を地域での新しい事業の創生と捉えるのであれば、それは新しい価値を生み出すこと、そして、その価値を持って「稼ぐ」ことを意味し、とてつもなくハードルが上がります。しかしながら、ニーズが多様化し、かつ変化が早い現在社会において必要以上に時間をかけて検討し、100%の勝算が見える段階まで動かないでいるとニーズはあっという間に変化しそのニーズに沿って開発された商品・サービスは陳腐化して行くことを考えるとアイデアは最小投資でどんどん試行(パイロット)を繰り返し、その中で取捨選択したり、改良していくというプロセスを取るべきだと思います。

今回アンケートに回答頂いた122の具体的な企画・提案内容を見てみると生活支援・生活サポート、移住・定住促進、観光振興、六次産業化、教育、廃校などの行政施設の利活用、起業サポート・地域企業支援、獣害対策・猟区管理、ふるさと納税・特産品開発・販路開拓など、伝統産業・文化振興、農村活性化、放牧放棄地再生など、自治体のPR・プロデュースなど内容は多岐に渡っており、小規模なアンケートでもこれだけのアイデアがあるということは、全国の協力隊の皆さんのアイデアを集めたりいったいどうなんでしょうか?
今の時代は何が正解か判断することは非常に難しい時代です。だからこそ、「やってみなはれ」の精神でまずはトライしてみることが重要ではないかと思います。

地域住民との関係づくり

アンケートの中で地域住民との関係作りのためにどのような活動をしているかについてもお聞きしていますが、4人に一人の方がなんらかの地域行事に参加しており「農作業や草刈り、雪かきのような作業のお手伝い」を含めると全体の4割の方が地域住民との接点を持つために積極的に外に出ている様子が伺えます。

また、隊員自身がやりたいことがある中で役場の職員や地域住民など地域に溶け込むことに多くの時間を費やさなければならないことに対して、どの隊員の方々も大変苦労していることは下記の隊員のみなさんのコメントからもよく分かります。

「協力隊の活動は、過疎地域にとって人材の確保や地域活性化などとても有意義な活動だと思います。ただ、一年間やってみて、自分のやりたいことと地域がやってほしいことは全く違っていることに気づきました。地域に合わせて、地域を良くするためのお手伝いをしているというスタンスでいないと失敗すると思います。私は、自分がやりたいことはまずは地域の人に認めてもらわなければできないということを皆様にお伝えしたいです。」
「自治体によって協力隊の活動内容は大きく違う。とにもかくにも、自分の理想や思いを最初の内は強調しすぎない事。自治体や地域が何を求めているのか、どういう人間性の住民なのかを知った上で、何かをプランニングしていき、地域を知ったからこそ、その中で自分がやりたい道筋へ上手に地域を誘導できるようになる。まずは焦らない事。私はこれが大事だと思う。」
「地域で働きかける人たちと同じ事を実際にして汗水流さないと、話を聞いてもらえないし、胸の内を明かすこともしてもらえない、活動地域の住人からは同じ目線の所まで来て一緒に身体を動かすことを厭わない存在か査定されていると認識しておく事。」
「協力者を増やすことも大切ですが、「敵」を作らないことはもっと大切です。意見や方向性などが合わない人への事前説明を大切にし、明確に反対されないように気を使いました」
「私自身には無いですが、「自分の思い」や「考え」が自身にも気付かない内に強く前面に出てしまい、「周囲の理解を得られない」だの、先輩隊員に話を聞かずに突っ走った結果「こんなに大事(おおごと)になると思わなかった」という隊員が多くいる。どんな事でもまずは相談する事が大事。簡単な事だけれども、案外出来ない人が多いのも事実です。」
「着任する前は個々の思う理想や、自治体がお膳立てしてくれてると思ってるかもしれないが、地域おこし協力隊に求められているのは、お膳立てされた活動ではなく、さらにそこから発展させる事が含まれている。決して、地域住民を置いてけぼりにして「協力隊が主役」になってはいけない。地域が差し伸べてくれる手があってこその協力隊であり、その為、まずは地域の文化や風土(人間の質的な意味)を知る所から始めて、時間をかけて地域の人達と信頼関係を築く事が大事。私は1年かけて地域を知り、現在「村に必要なこと」などを肌で感じられるようになり、時間をかけて積み重ねた信頼があって、企画・提案など行政や関連施設、農家さんらには、ほぼ100%、協力をしてもらえる。」
「自分のやりたいことを第一に考えると、地域・行政の理解が追い付かないことが多々ある。最初の1年間は、地域付き合いを大切に、地域の行事に参加したり、地域と自分の距離感を縮める必要がある。2年目から自分の思いを形にして地域に提案するといいかも。」
「地域おこし協力隊は“地域おこしおこし”であり“地域づくり”ではない、というネーミングの意味を考えて行動されると良いと思います。あくまでも主役は地元の方であり、個人的に自己解釈すると、眠っている地元の方の意識を“起こす”のが協力隊の仕事である、という事を忘れてはいけないと思います。」
「自分が何をしたいかよりも、地域が、自治体が何を求めているかをまずしっかり把握してください。その上で、求められていることと自分のしたいことが重なっていたらいいと思います。着任する前に、できるだけすり合わせておくことが大切です。もし住居が空き家であれば、しっかり状態を把握しておかないと大変なことになったりします。」
「自分がやりたい事をやる、言いたい事を言うだけでは地域で生きていく事は難しい。まずは聞く事に重きを置き、味方を増やしてからやりたい事をやったり、言いたい事を言うようにするといいかもしれない。」
「信頼を得ることが第一だと思います。自由な行動をとれるようになるためにはそこが一番の近道だと思います。ただ、そのうえで、やり方は多少自治体に合わせたきっちりとした申請等に気を付けながら、考え方自体は役所に染まらず、しっかりと自分の考えを保つべきだと思います。役所や地方にない考えを活かすためにも、「やり方」を考えるべきです。」
   
 

上記から分かる事は、多くの協力隊が自分のやりたい事と地域の現実とのギャップに苦しんでいる事、それを乗り越えるため時間をかけて丁寧に地域住民との人間関係づくりを行い、信頼関係の構築を行っているという現実です。

地域と地域住民を理解する事は、地域おこしを進める上でも、最終的に定住する上でも、さらにはその地域で起業する上でも必要になることからこの状況を当然と感じる方も少なくないと思いますが、反面3年間しかない地域おこし協力隊の活動期間をもっと効率的に、効果的に使えないかという考え方もあるのではないでしょうか。
地域おこし協力隊制度も2017年度で8年目になることを考えると、地域おこし協力隊制度も認知度も上がってきていると考えられ、その点を踏まえてもより効率的・効果的に隊員が任期を全うするための環境整備はもっと進んでもいいと思います。

具体的に言えば、役所と地域住民の間に信頼関係があれば、役所の採用した地域おこし協力隊への地域住民の見方も変わるかもしれません。もしくは、地域おこし協力隊が地域に溶け込みやすいように集落支援員を導入する方法もあるかもしれません。その他にも工夫次第でいろいろな方法があると思いますが、いずれにせよ土台になることは地域住民と役所の関係を現在の状況に合わせた最適な形に再構築することではないかと思います。

休日の過ごし方

休日の過ごし方についてアンケートにてお聞きした結果、多くの隊員が休日を返上し地域行事や地域の任意団体のイベントに積極的に参加し地域住民との人間関係づくりを行っていることやサービス出勤を含め地域おこし関連の活動を行っている様子が伺え、上記の地域住民との関係づくりにおける結果と符合しています。
また、「業務として認められなかった活動に費やした」という回答も14%ありますが、これは直接取材の中でも多く聞かれ、隊員としては地域おこしと考えている活動も受け入れ自治体の職員には認めてもらえず休日に行っているという隊員の実態が浮き彫りになり、地域おこし協力隊の仕事において活動費のみならず活動自体の公私の線引きが難しいことが改めて表す結果にであると言えるのではないでしょうか。

直接取材の中でもお聞きした実例として、地域住民との関係づくりや任期満了後の生業づくりのための研修やスキルアップ活動、人脈づくりなどどこまでを地域おこし活動として認めるのか取材をしている私でも一概に判断ができないものが多くありました。

また、アンケートにおける「伝えたいこと」に回答いただいた下記のコメントからも公私の線引きの難しさに苦しんでいる隊員・職員の姿が伺えます。

「役所からの委託業務と任期後に向けた活動の割合を活動期間が経つにつれて、その都度意見交換を行いながら変えていく必要があると思う。」
「地域おこし協力隊という名前がキャッチーなため、個人の団体に話をして欲しいと依頼を受け、休みで出る予定だったが肩書きを名乗る以上仕事で出ないといけないと怒られ、また個人の集まりに出るのはよくないと言われた。場所によると思いますが」

しかし、その一方で線引きに関して困っているという話が一切でない職員・隊員がおられる自治体もあり、違いはなんだろうかと考えると、性善説の職員と真剣な隊員の組み合わせであり、双方がきちんと向き合っているからこそ生まれる信頼関係がそこにはあることを感じました。また、その関係にはある意味、先生と生徒、親と子供のような厳しいながらも信用して見守っているという雰囲気を感じました。

最後に

活動費を使うことの源泉となるものであるため当然ですが第8回「活動状況①」の活動費同様企画・提案の受け入れについても担当者に大きく依存している様子が伺えました。
一人当たりの企画・提案回数を単純計算してみましたが、2.05でした。
この値は平均値ですので人によってはもっとたくさんの企画・提案を行っていることになりますが、そのうちどのくらいの企画がきちんと検討されているでしょうか。
現在のように変化の早い時代にはスモールスタートでトライアンドエラーを高速で繰り返す以外に成功に近づく道はないと思いますが、地域おこし協力隊の現場ではそのはるか以前の段階で止まっている印象を強く受けると同時に光るアイデアが埋もれているのではないかと思うととても残念に感じます。

事業にしても町おこしにしても成功する施策はほんの一握りだと思います。そんな中で成功する施策を増やしていくためには日本全国の地域おこしの現場で積極的なアイデア出しとその試行を繰り返し、成功した施策を積極的に横展開するより他ないと思いますが、現在の地域おこし協力隊の現場ではそのどれもがうまくいっておらず、道のりはとても遠いと言わざるを得ません。

また、活動費同様、活動そのものの公私の線引きが難しく、地域住民との関係作りの時間や任期満了後の仕事につながる活動・勉強をどう捉えるのかで職員と隊員の間で意見が割れることも少なくない様子が伺えました。

そんな中、多くの協力隊員が線引きの如何に関わらず地域おこしの大前提となる地域との繋がりを強くするために多くの時間を費やし積極的に地域活動に参加しています。
そして、積極的に様々な地域おこし企画・提案を行っています。

この現状を踏まえ地域おこしを成功させるために自治体の皆さんが、心がけるべきことの一つが「やってみなはれ」の精神を持つことだと思います。こういうものは組織文化とも密接に関連しているため首長の姿勢が実はもっとも大事なのかもしれません。とにかく「やってみなはれ」の精神でどんどん新しいことに挑戦するフィールドを提供し続けることができる自治体が、挑戦をしたい優秀な人材を呼び込み、育て、最終的には勝つのだと個人的には思います。

一方で地域おこし協力隊の皆さんは、どんなことがあっても躊躇することなく、もっともっと図々しくよそ者視点としてアイデアを出し、きちんと計画を作り、周囲の人を巻き込み、スモールスタートでのトライアンドエラーを繰り返してほしいと思います。
また、その実現のために求められる知識や経験を積極的に得る努力を欠かしてはなりません。それは、地域内外の方々・様々な立場の方々と交流を持つことであったり、計画作りの基本的なことを知ることであったり、人を動かす自分なりのコミュニケーションスキルを身につけることであったり、マーケティングやPRの基本について勉強することかもしれませんが、とにかく足取りを止めずに前に進み続けてほしいと思います。
「失敗」とは諦めること。諦めなければいつかは必ず成功します。それが地域おこし協力隊活動が終わった後だとしても。
同時に限られた自分の人生です。がんばることも大切ですが、時には引くことも勇気です。自分の心と体に向き合い休むべき時には休む、止める時には止めるという判断も大切してほしいと思います。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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