地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


活動状況①

 
 

第八回となる「地域おこし協力隊の仕事」ですが、今回は「地域おこし協力隊の現状」シリーズの5回目として、そして今回を含めたここからの2回は地域おこし協力隊の活動状況についてお伝えしていきたいと思います。
今回は2部構成の第一弾として特に活動拠点・内容、活動費の活用状況、協力隊同士の連携度についてご紹介いたします。


なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

さらに前回同様、今回のブログも特に現在隊員を受け入れている自治体の職員の皆さんやこれから隊員を募集することを考えておられる自治体の首長を始め、関係者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんがどのような背景を持ち、どのような思いで隊員に応募してきたか、活動中に感じている不安はどんなものかなど隊員の皆さんの現状について受け入れ自治体の皆さんに知っていただくことで、隊員の皆さんへの理解を深めていただくと同時に地域おこし協力隊の成功の必須要件である隊員と受け入れ自治体および職員との間の信頼関係を築く一助になれば幸いです。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

活動拠点

隊員の皆さんが活動をされている活動拠点についてお聞きしたアンケート結果によると、役場などの行政機関がほぼ50%、NPOや観光協会など行政機関以外の団体が17%、自治会などの住民組織が16%、農家などの地域住民宅がおよそ5%という結果になりました。

また、直接取材を通して隊員や職員の皆さんにお聞きした話しによれば、行政機関に席を持ちながら屋外で活動している隊員が大半であり、行政機関の席にいることは非常に少ないということも浮き彫りになりましたが、行政とその他の拠点が約半々になっている右記のグラフはそのことをよく表していると言えるのではないでしょうか。

しかし、一方で役場で大半の時間を過ごしているケースもある様子も伺えましたが、それは所謂隊員の活動がしっかりと定義されておらず放置状態となっているか、明らかに職員の仕事である定常的な仕事をさせられているかのどちらかであることも分かりました。

また、第五回「地域おこし協力隊の現状:成り手② 思い・苦しみ」でもご紹介した隊員が感じる「孤独感・つらさ」に関してお聞きしたアンケートの結果(右グラフ、スマホ画面の場合は上グラフ)によれば、役場外で活動をしている隊員の方が相対的に孤独感やつらさが強い傾向があることがわかりました。
これは、役場の職員の目が届かない役場外の3セクや任意団体、NPOナなどの組織にて地域おこし協力隊の面倒を見る特定個人に依存した閉鎖的な環境で活動することが、高い孤独感やつらさにつながっているのではないかと考えられます。

同時に第7回「受け入れ態勢」の中でも触れたように派遣先の団体に対して行政側の事前説明が不十分であることから派遣先と役場の関係がこじれ、隊員が不快な目に会うだけでなく活動の拠点を変更せざるを得ないケースもあり、地域おこし協力隊の活動が役場外になる場合には、地域おこし協力隊制度や活動内容についてきちんと説明するなど事前の受け入れ態勢の整備により一層の注意が求められると言えます。

さらに、役場外の団体や住民組織に派遣されている隊員は役場の職員と疎遠になる傾向が強く、極端なケースでは報告書をやり取りするだけの関係になっているケースも少なからず見られました。
このようなケースでは活動費についてもきちんと話し合いがなされていない場合が多く、そのため隊員から活動費を使用したいという要望があっても職員は背景が分からないことから判断がつかず結果的に放置する形となることも少なくなく、隊員側はそれをうやむやにされたと感じ、さらに両者の溝が広がる様子も見られました。

特に合併歴がある比較的規模の大きい市では、隊員が支所に派遣されることも多く、実際に企画・採用を行った本庁との間に距離があるため支所の担当者がきちんと制度を理解していないケースや制度の運用における成功事例などを自ら情報収集し、運用態勢を整備していく時間もなく動機も希薄であることから、結果的に隊員が不遇な境遇になる傾向が強いように感じます。

しかし、その一方で役場の職員、集落支援員※1、地域おこし協力隊が協力し、地域おこしの拠点を集落単位で作り、その拠点を中心に協力隊が活動している機動的な自治体もありました。

地域おこし協力隊に並び地域おこしの担い手として活用されることが多い集落支援員についても自治体によりその活用状況はまちまちであり、積極的に活用している地域もあれば全く活用していないこともあるようです。また、活用方法にも濃淡があり、明確に隊員とペアを組ませ、それぞれの役割をしっかりと定義しているケースもあれば、とりあえず配置はしているが実態的に全く機能していないというケースもあるようです。
その背景には、地域のあるべき姿、地域おこしのあり方などを地域住民と合意していないにもかかわらず、とりあえず行政主導で集落支援員を導入しているという実態があり、そのため嫌々集落支援員をしている地域住民も少ないないという実態もあるようです。
集落支援員はなりたがる人が少ないという状況からか移住者が集落支援員の役割を担っているケースも多く、結果的に移住してきた人間が中心となり地域おこしを進めているという現実もあることが分かりました。

総じて言えることは、地域おこし協力隊の活動拠点として様々なケースがあるのですが、役場内が主な活躍の場になる場合には本来行政機関がすべき業務を手伝うことになることが多い反面、役場の職員との距離が近くコミュニケーションが取りやすく信頼関係が構築しやすいため活動費の活用についても同意が得られやすいという側面があります。
一方で、役場外の組織や地域を主な活動の場とする場合はその拠点が閉鎖的な環境になる傾向が強く、そのため孤独感やつらさを感じる度合いが相対的に強くなる傾向があると同時に役場の職員と距離があるため信頼関係の構築が難しく、場合によっては完全に関係がなくなってしまうという課題もありますが、集落支援員の配置を含め、主な活動の拠点となる役場外に地域おこしの拠点をしっかりと作り、役場の職員、地域住民、地域おこし協力隊の役割をきちんと定義することで機動的に地域おこし活動を行う仕組みを作り、これらの課題を乗り越えている地域もあり、活動する拠点がどこであれ地域のあるべき姿や地域おこしのあり方をきちんと整理し、地に足のついた「地域おこし」の仕組みを作っているかどうか、関係者それぞれの役割を定義し、関係者が一丸となり取り組める環境を作れているかが鍵であることが改めて分かりました。

*1:集落支援員とは
集落の「目配り役」として、集落の状況把握、集落点検の実施、住民と住民、住民と市町村の間での話し合いの促進等を行うことを期待し地方自治体が、地域の実情に詳しく、集落対策の推進についてノウハウ・知見を有した人材に対して「集落支援員」として委嘱を行う制度。地域おこし協力隊と同様に特別交付税による財源手当がされているが外部から募集される地域おこし協力隊に対して集落支援員は集落の住民の中から選出されることが多い。
詳しい情報は下記の総務省のHPを参照ください。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/bunken_kaikaku/02gyosei08_03000070.html

活動内容

次に具体的な活動内容についてアンケートに回答いただいた結果ですが、「観光振興」がもっとも多く約28%、次に「移住・定住促進」が21%、「六次産業化」が15%、「廃校などのハコモノの利活用」が8%となっていますがその他にも多くの活動があり、非常に幅広い活動がなされていることが分かります。

また、同じアンケート上で隊員の経験についてもお聞きしており、経験を活かした活動をおこなっているかを確認するために隊員の経験と活動内容の相関関係について見てみましたが「建設業」と「移住・定住促進」、「サービス業」と「観光振興」など一部において相対的に値が大きく視覚的には関係性がありそうな様子も見られましたが、統計的には明確に関連性があるとは言えないという結果になりました。
このように経験と活動内容の関連性が見えにくい背景について、隊員や職員の皆さんとお話をさせていただく中で感じることは、コミュニティー型の場合は特にそうですが、地域おこし協力隊にとってもっとも大切なことは地域に溶け込むことであるため採用時に重視するポイントとして経験やスキルよりも人柄や人間性を重視する傾向が強いということでした。
また、協力隊発足当時はコミュニティー型の隊員活動が主流であり、ミッション型についてはここ数年増えてきたという流れもあり、現時点では明確に隊員のスキルや経験を応募条件に加えるようなミッション型の採用があまり多くないという実情もあるのかもしれません。

次に隊員の活動内容と隊員の満足度の関係、つまりどんな活動をしている隊員の満足度が高いのかを見てみましたが、「ふるさと納税・特産品開発・販路拡大など」や「六次産業化」、「起業サポート・地域起業支援」など地域の経済循環に寄与するような活動において満足度が高い傾向があることがわかりました。
この背景に何があるのか厳密には分かりませんが、様々な活動をされている隊員の中でも「稼ぐ」を目的としている方は目標が明確であり、現時点ですべきこと、そして今後すべきことが相対的に明確である印象があり、「稼ぐ」ことは簡単ではなく障害も多いのですがやるべきことが定まっているという意味で満足につながる充実度が高いのではないかと思います。


また、活動内容について隊員や職員の皆さんに伺った話の中で多くの隊員の皆さんがおっしゃっていたことは、募集要項上の活動内容と実際の活動に乖離が大きいということでした。
さらに、その背景には、隊員を入れれば交付税がもらえるということで、自治体内で受け入れについて十分な検討や準備をせず、他の地域の募集要項に記載されている内容をそのままコピーし募集・採用するなど、突き詰めればそもそもの「地域おこし」に関する検討が全くなされない状態で協力隊を導入している自治体もあるという実態も見ることができました。
その結果、やることがないため隊員が放置されることも少なくなく、そのため隊員は一人でも手がつけやすく成果として目に見えやすい自治体のPR活動に終始するという状態につながっていくのかもしれず、上記の満足度と活動内容の関係を示すグラフにおいて自治体のPR活動を行っている隊員の満足度が最も低い背景には、こんなことがあるのかもしれません。

任期中の活動と任期満了後の生業の関係

任期満了後の生業と任期中の活動内容は切っても切れない関係にあることは言うまでもないことですが、地域おこし協力隊の活動の中でも任期満了後の生業につながりやすいものとそうではないものがあるのでしょうか。地域おこし協力隊の代表的な活動タイプである「コミュニティー型」と「ミッション型」のそれぞれについて見ていきたいと思います。

まずは「コミュニティー型」ですが、このタイプは地域住民の生活支援や地域の行事・イベント開催の手伝いをすることが多いことから活動の性質上任期中の活動が任期後の生業につながりづらい傾向があるようです。

ただ、「コミュニティー型」活動の中でも第六回「地域おこし協力隊:募集条件・処遇・採用」でも触れたように明らかな後継者候補、特に地元の個人事業主など事業としてきちんと成立しているケースでは、任期満了後の仕事が確定しているとも言え、引き継ぐ事業や現経営者との人間関係がうまくいけば、隊員本人もHappyなだけでなく、自治体としても定住見込みが高まり、また、地元の事業主としては事業継続の目処が立つことから一つの成功モデルと言えるのではないでしょうか。

また、「ミッション型」においては、たとえば観光協会にて観光振興をミッションとするケースや商工会や第三セクターにて商工振興をミッションとするケースなどでは、任期満了後に観光協会や商工会での採用なども考えられることから就業という観点では比較的有利ではないかと考えられます。
つまり、活動内容より活動拠点が雇用力のある組織・団体であるという点が就業という観点では重要であるとも考えられます。

しかしながら、自治体や3セクなどの半公社での就業については地域住民から地元の雇用を奪っているという見方をされることもあると聞いており、地域の状況に左右されることも多いことから安易に期待することは危険だと思います。また、特に顔が見えやすい規模の小さい自治体ではその傾向が強い様子が伺え、これから協力隊になることを考えている皆さんにとっては任期満了後の生業を見据えて活動選びという観点で留意すべきポイントかもしれません。


平成27年度末の総務省の調査結果において2割弱と言われている任期満了後の起業者の割合ですが、任期中の活動内容と起業内容の関係について実際に自治体職員の皆さんにお話しを伺ったところ、起業する隊員のパターンとして「ミッション型」の活動をしていた隊員がその活動の延長線上の事業で起業をしているケースとミッション型、コミュニティー型に寄らず任期中の仕事とはあまり関係なく趣味の延長線上や自分の夢やライフスタイルの実現の形として起業するケースと大きく二つのケースがあることが分かりました。

前者の具体的な例として、任期中に自然環境を生かした活動をすることをミッションとしていた隊員が任期中に様々な自然体験プログラムを企画・実施する自然学校を立ち上げ、任期満了後はその活動を事業化することを考えていたり、特産品開発活動に従事している隊員が任期満了後は特産品を製造販売する事業を行うなどのケースがみられ、後者の事例としては、カフェやレンタルバイク屋、ゲストハウスなど自分の趣味の延長となる事業を行っているケースがそれに当たるのではないかと思います。

また、「コミュニティー型」は、田舎暮らしに憧れる隊員にとっては地域の高齢者などの生活支援を通した人助けができたり田舎生活そのものを満喫できるため任期中の満足度は高くなるのではないかと思いますが、任期満了後の定住を前提とした生業作りに課題が残ると考えている隊員もいました。
さらに、いずれにせよ協力隊は任期中必ずその市町村内のどこかの地域に住むことになり、その地域において地域イベントなどに参加するようになることから、ミッション型での採用であっても結果的にはコミュニティー型の要素も含まれていくため、コミュニティー型単体での採用については懐疑的な考えを持っている方もおられました。
このことから言えることは任期満了後の生業作りを踏まえて考えるとコミュニティー型の地域おこし協力隊は減少していき、ミッション型へ収束していくのかもしれません。

いずれにせよ今回お話しをお聞かせいただいた皆さんのお話しを通して感じることは、地域おこし協力隊の多くが任期満了後の定住のために必要な生業作りに非常に苦戦しているという事実です。
実態として、任期満了後に起業したが単体の事業としては生活を支えることができず、アルバイトをして生計の足しにしている方や、パートナーの収入に頼っている方など非常に厳しい様子が伺えました。そんな中で一部の自治体を除く、自治体の多くが任期満了後の隊員の仕事を隊員個人に任せているというのが基本姿勢であること、また一部に任期満了後の隊員の仕事について全く関心のない受け入れ担当の職員もおられ、とても違和感を感じました。
一方で自治体が隊員を募集する際から任期満了後の生業を意識し、最終的には地域の課題を解決する手段としての「仕事」になりうるミッションや活動内容を設定し、そのミッションや活動内容を遂行できるスキルや経験を有する人材を採用している自治体もあり、そのような自治体における地域おこし協力隊の定住率を非常に高いという事実も見ることができました。

活動費の活用状況

隊員向けに行ったアンケートにおいて活動費の使用状況についても伺っていますが「一部でも使えた」と回答している人が約7割を占める一方「全く使えなかった」が約5%、「存在を知らなかったためわからない」が約10%を占めるという結果となりました。

また、「その他」が約17%を占めており、その具体的な内容について見てみると一部に活動費の使用状況がオープンではない実態や担当者個人の判断で是非を決定している様子を垣間見ることができます。

「開示されていない為幾ら使えたのか分かりませんがかなり融通を利かせていただきました。」
「金額は分からないが使うことができていたと思う」
「実態はわからない」
「担当者個人の判断で決められていた」
「いつもうやむや」

さらに、アンケートにおける「伝えたいこと」における下記のようなコメントからも活動費の使用については隊員の中で不信感が大きい様子が伺えます。

「活動内容・経費等について明確化にすべき」
「担当部署の設置、研修、活動費の使い方など制度として国がきちんと確立してほしい」

以上のことからあくまでも隊員の視点からですが「不透明」かつ「担当者個人の裁量」で活動費が運用されている状況が一部にある様子が伺えます。

また、活動費の使用状況と隊員の満足度の関係を見るためクロス集計したところ金額の多寡によらず活動費を使うことができた隊員ほど満足度が相対的に高く、逆にオープンではない状況や使えない状況であった隊員の満足度は相対的に低いことが分かり、活動費は隊員の動機付けに非常に重要な要素であることも分かりました。

また、生活環境の整備にかかる費用を除く初年度および2年目の活動費の支出先について職員や隊員の皆さんに伺ったところ、消耗品、備品、資格取得費、研修費などが主なものであることがわかり、総務省により制定され平成26年12月3日に一部改正された「地域おこし協力隊推進要項」の「地域おこし協力隊員の活動に要する経費」に記載されている内容と合致しており、国からの指示を遵守する姿勢も伺えました。

一方で活動費の運用の難しさを物語る話も多く聞かれ、その典型が以前にもご紹介した固定資産の購入です。
具体的には、地域住民への説明が難しいことから任期満了後に個人の資産になりそうなものの購入は許可しない自治体が多く、2年目や最終年の起業に向けた準備として活動次第では各種必要となる機器(農機、調理機器など)の購入を活動費から行うことができないため自費で購入している隊員も少なくないと聞きました。

さらに活動費の使用状況・明細を隊員に対してオープンにしていない自治体も多く、そのため予算が別目的に流用されているのではないかと疑う隊員もいました。
また、活動費の使用についての明文化されたガイドラインがない自治体も多く、その場合、活動費の使途の判断を担当職員が行っていることから同じ自治体で活動する隊員であっても配属地域や活動内容により活動費の活用幅が異なるという状況が発生しており、隊員の不信感を募らせる大きな要因となっている様子も見ることができました。

また、最終的に活動費使用の許可が下りたものであっても行政機関内での手続きが煩雑であったり購入先に制約があったりすることからスピーディーに必要な物品を購入することができず、活動費の使用を諦めてしまい、活動費をほとんど使用せず必要なものがあれば自費で購入している隊員も少なからず見られ、アンケートにおける「少し使うことができた」と回答した方々はこのように煩雑で制約の多い行政機関内での予算執行手続きに辟易し、活動費の使用を諦めた方々も含まれているのかもしれません。

一方で、数は多くはないですが活動費の予算策定を隊員と一緒に行うなどオープンな活動費運用を行っている自治体や、より機動的な物品購入を行うために出納プロセスに特例を認めたり、隊員向けの新たな補助金制度を作ったりする自治体もあり、そのような自治体で活動する隊員は税金を使わせてもらっているということに責任感を感じながらも担当職員と信頼関係を築き、のびのびと活動している印象をうけました。

また、自治体の担当職員からもお話をお聞きしましたが、多くの方の第一声は、自由すぎてどうして良いかわからないというものでした。つまり、制度自体に何が良くて何がいけないかという明確な定義がないため、判断ができないというお話でした。
また、事後判断される交付税の対象として認められないことがないように安全サイドを取ることが多くなり、さらには住民説明が難しいものは避ける傾向が強くなり、「疑わしきは許可しない」という現状につながっていることが分かりました。
しかし、一方でこのような活動費の運用状況に対して隊員に不自由な思いをさせているという認識を持っている職員も多く、しかし自分の判断ではどうすることもできないとおっしゃる職員も少なからずいらっしゃいました。


もう一つ、地域おこし協力隊の活動費活用の障害になっていることに自治体の予算編成サイクルがあります。
一般的に自治体の予算は前年度の9月から10月に確定するためその年の予算は前年の10月までに策定・計上する必要があるわけですが、4月に着任する隊員の場合は着任年の予算は前年の10月に確定してしまっているため変更することができず、そのため着任年は、前年の10月時点で担当者が「こんな感じかな?」という感じで作成した予算を活用することになります。
また、一般企業でもそうですが一般的に予算は使途を指定する科目に分類されているため、割り振られた科目以外の使途に予算を使うことができないという制約があります。
たとえば、特産品開発をミッションとする隊員が特産品の原材料や加工設備の購入がしたいと考えても研修費として多くの予算が割り振られているときには一年待たなければならないということになります。
活動費の使途は特別交付税の算定根拠となるため内訳を含めて県や総務省に報告されていますが、他の自治体の活動費の利用状況は自治体間でも公開されておらず、そのためこれから協力隊を募集し翌年4月に着任を考え予算計画を策定しようとしても参考にできる情報が少なく、担当者としては手探りで予算を計上しなければならないという現実もあります。

また、活動費は特別交付税を財源とする自治体予算であるため、原則的に他の予算と同じような決められた予算執行プロセスを取る必要があります。
具体的には、入札などの方式により発注先を選定したり、金額毎に決裁権限が決められていることから調達に時間がかかることが多く、自治体によっては数十万円の物品の購入をするのに1ヶ月以上かかることもあるという話もありました。
しかしながら、このようなプロセスが存在する背景を知らない上に任期が決まっており時間がない隊員にとってはこのような時間がかかるプロセスは活動費を使わせたくない単なる嫌がらせにしか感じないようです。

私も以前半分公社のような会社に勤めていたことがあるため、このように時間のかかるプロセスが存在している理由に「説明義務」があること、特に公正公平が求められ、最小コストで最大の効果を出すことを求められている自治体においては特定の業者だけに便宜を図る事が許されず、その業者を選んだ理由やその購入金額の妥当性を説明する義務を負っていること、そして、その「説明義務」を果たすために情報収集が必要であり、ひいてはそれが「不正防止」につながるという考え方があることは容易に理解することができますが、そのような経験もなくきちんと説明もされていなければ知る由もないことであるとも言えます。

一方で自治体によっては購買プロセスがそれほど厳密ではなく、指定の業者、指定のカタログをとおして購入する以外は特に制約がないというケースもありました。このようなケースでは、地域の業者にお金を落とすことが目的となっていることも少なくなく、ホームセンターに行けばすぐに購入できるような物品であってもわざわざ地元の商店に発注し、その商店がホームセンターで購入し役場に卸すということが定常化しているという話も伺いました。
このような場合、当然ですが調達コストが上がるだけではなく、調達期間も長くなるため機動的な活用が難しくなりますが、さらに特定業者を優遇している状況であることから公平公正を第一義とし、最小のコストで最大の効果を生み出すことが求められている自治体のイメージとは合致せず違和感を感じる隊員もおられました。

また、隊員が活動する上で時に購入する必要がある固定資産となる物品の扱いに困ることが多く、第三回「自由度が高い制度ゆえの課題」でも触れたように固定資産の購入を許可しない自治体も多いようです。たとえば、農機であったり調理器具であったり、宿泊関連設備であったり、様々ですが、隊員の活動幅が広がれば広がるほど、任期終了が近づけば近づくほど避けられないことではないかと思います。
この点については、先述した通り隊員の活動に対する必要性に関わらず単純に禁止してしまう自治体もあれば、真剣に受け止め、なんとかしようと一生懸命工夫する自治体もあり、対応に大きく差が出るところでもあります。

任期満了後の隊員の生業作りに必要な物品であることが大前提ですが、一部の自治体では、役場の資産とし、隊員に貸与する方法を取っていたり、さらに進んでいる自治体では任期中は役場の資産とし貸し出す形をとるが任期満了とともに安価に隊員に卸すなど極力隊員の活動が滞らないように配慮する自治体もありました。
さらには活動計画をきちんと提出することが前提ですが補助金制度を新設し、より自由度を高めた形態で隊員の固定資産の購入を支援している自治体もありました。

協力隊制度は非常に自由度が高い制度であるが故に悪用しようと思えばいくらでもでき、隊員の活動費を全く別の用途に使用し、地域おこし活動として使ったように見せることも可能と言え、実際にそのような事例があるという話を隊員のみならず担当している職員の方からもお聞きすることが少なからずありました。

同時に地域おこし協力隊の活動用というより自宅用の物品(自宅の草刈りのため草刈り機など)の購入を求める隊員もいる状況もあるという話を伺いましたが、第六回「地域おこし協力隊の現状:募集条件・処遇・採用」でも触れたように隊員の生活環境の整備のために活動費が使われているという状況もあり、線引きが難しいと感じている自治体の担当者の方も多くみられました。

総じて言えることは活動費の運用についてはグレーな部分が大きく、調達プロセスやその執行プロセスにグレーな部分が垣間みられると同時に隊員側も活動費に相応しくない理由で活動費を利用しようとするケースも一部に見られました。この背景には、活動費についての明確なルールがないことから何を「隊員の生活環境整備」として「隊員活動」としてふさわしい購買なのかを判断する線引きが非常に難しいということ、および自治体の予算編成サイクルや予算執行の仕組みなども関連しておりそれらが相まって活動費活用を難しくしている様子が伺えました。

しかしながら、活動費の使用状況が隊員の満足度に大きく影響しているという事実や任期が決まっている隊員にとっては活動期間中の成果や任期満了後の生業作りに大きな影響をあたえるものであること、さらには一部には自由度が高い制度であることを逆に利用し柔軟な発想で活動費運用を行なっている自治体もあることから、隊員の活動がより大きな成果につながるよう大いに挑戦・工夫すべき分野であるとも言えると思います。

協力隊同士の連携度

総務省が公表している平成28年3月時点での協力隊人数を見てみると協力隊を2名以上配置している自治体は受け入れ自治体の84%を占めていることが分かります。また、配置隊員数が5名以下の自治体は74.7%を占めており、隊員数が1〜5名である自治体が大半であることがわかりますが、そこには総務省や都道府県ができる限り2名以上にすることを推奨しているという背景もあるようです。

できる限り2名以上にすることが奨励されている背景には、1名では孤立することが多く孤独感やつらさが大きくなる傾向があるのではないかと思われますが、当社が行ったアンケートの結果からもやはり一人で活動している隊員の方が孤独感・つらさが相対的に高いという結果となっており、複数人の隊員を配置することの重要性を裏付けています。

では、その複数いる隊員の連携状況はどうなのでしょうか。協力隊同士の連携度についてアンケートにてお聞きし、1を最低、10を最高とする10段階から連携度を選んでいただきました。
その結果、連携度の平均値は5.25(真ん中の値:5.5)となり、どちらかといえば連携度は低いという結果になりました。また、回答の中で「全く連携なし」が「緊密に連携」に次いで多く全体の約1/5を占めていることから必ずしも連携が強いとは言えない状況が浮き彫りになりました。

実際に隊員の方々からお話をお聞きする中では、拠点毎・活動毎に一名という配置が多く、定期的に開催される担当職員と隊員が集まる報告会や隊員同士の有志の集まりなどの機会に顔を会わせることはあっても、日常の活動の中で隊員同士が連携する機会はあまり多くないという現状も見ることができました。

しかし、一方で一自治体での採用隊員数の増加が今後さらに進んでいけば、一つの地域、一つのミッションに複数の隊員という配置も十分に考えられ、受け入れ自治体としてはチームとした成果を出していくための運用方法が今後はより一層求められるようになるかもしれません。

また、アンケートにおいて同時期に複数協力隊を募集することの是非についても聞いていますが、その結果54%の方が「有益である」と回答しており「有益ではない」は4%程度である一方で「どちらとも言えない」が42%を占めており諸手をあげて賛成ではないという事実も浮き彫りになりました。

*母数は同期協力隊がいない方も含めた全体

次に有益であると考える理由、有益でないと考える理由についてそれぞれ伺いました。
まずは有益である理由ですが、およそ43%の方が「複数の力の方が物事を動かしやすい」と回答しており、次いで37.5%が「相談しあえる、悩みを共有しあえる仲間ができる」ことをあげており、この二つで全体の8割を占めています。
また、少数意見ではありますが「カバーしあえる」や「周囲から活動が見えやすい」など現実的な意見もありました。

一方、有益ではない理由ですが「意見の不一致」が最も多く36.4%を占めており、次いで「自治体、協力隊個人の明確な戦略と未来像がなければ無益」と「その他」が同率の18.2%となっています。また、中には「優劣をつけられる」や「年齢の序列が入るため意見が通らない」など相対的な人間関係に起因する問題をあげている方もおられると同時に「進捗が遅い」ことをあげている方もおられ、状況次第では人数が多いことがマイナスに働くケースもある様子が伺えます。

また、この状況をよりイメージしやすいように「有益ではない」と答えた方の具体的なコメントを以下にご紹介いたします。

「どっちつかずになり、地域住民も協力隊の立ち位置に困惑する」
「協力隊は15人いたが、意見が一致しなく自分の場合全く仕事ができなかった。」
「内々でもめてたり、お互い関係ないって活動の仕方をされてるところを多く見ます。有益/不益どちらとも言えないのですが、むしろ意味が薄い気はしています。」
「隊員同士の意見が合わない場合は、役場は都合のいい方だけを依怙贔屓する。」
「意見の対立による衝突の可能性、住民から優劣をつけられる」
「同年代でないと、年齢による序列ができたりする。実際、自分のところでは同僚隊員の子供ぐらいの年齢であった自分の意見は軽んじられていたし、使いっ走りにされがちだった。自治体側が協力隊活動のベクトルを明確にし、そのベクトルにあった人材を揃えて採用できていないと烏合の衆になる、協力隊員間の人間関係でも揉める。」
「行政側や受入れ地域に任期終了時の明確な戦略があるか???ない場合は有益ではないと思います。同時にそれぞれの協力隊自身に明確な未来像がない場合は有益ではないと思います。」
「活動内容・他サポートが明確でない場合、単なる人手としての募集だった場合は有益ではない」
「仕事内容による。一人で進めた方がいい内容と、チームで進めた方がいいものがあると感じるので。」

実際に隊員の皆さんにお話をお聞きする中では、自治体によっては活動拠点毎・活動内容毎に処遇が若干異なることや自治体の縦割り文化などの組織的な弊害により活動費の活用幅が異なるという状況が発生しており、このことが隊員同士の横連携を阻害する心理的要因につながっているケースも少なからずあることがわかりました。

また、第四回「地域おこし協力隊の現状:成り手①」でも触れましたが隊員の中でも地域おこし協力隊活動に関する思いなどの点で温度差が大きく、着任当初は地域を越えて連携することを意識していた隊員たちも時間の経過とともにその意識が薄くなっている様子も見ることができました。
おそらく、その背景には時間の経過とともに隊員間での地域おこしに対する当初の温度差が良い一層大きくなり、意思の疎通が難しくなってくるということに加えて結局横連携しても任期満了後の生業探しの役に立つことが少ないことから、任期満了が近づくにつれ無意識に必要な物事を選別している一環であるとも言えるのではないでしょうか。

一方で、一部の自治体ではありますが、個々の隊員の活動が地域の大きなゴールを達成するための手段として明確に定義されているところもあり、そのような自治体では隊員個々の活動に明確な繋がりがあることから隊員が自主的に横連携していくという現実も見られました。
このような自治体では、個々の活動の成果は小さくともそれらが共通の目的のもとに繋がることで、個々の成果を足し合わせたものよりも大きな成果を生み出しており、改めて協力隊制度の活用はあくまでも大きな目標を達成するための手段と心得、協力隊運営の大前提として共通の大きな目標をきちんと定めることの重要性を感じさせられました。

最後に

前回ブログの「受け入れ態勢」では主に協力隊の皆さんの着任直後の体制について触れましたが、今回は活動そのものにフォーカスすることで活動環境や活動内容をより一層イメージすることができたのではないでしょうか。
また、任期中の活動環境・内容、活動費の活用状況などが任期満了後の就業や起業に大きな影響を与えていることが再確認できたのではないかと思います。

当たり前のことですが、定住を期待し協力隊を採用したのであれば、定住する上で必須となる「仕事」を意識した活動環境をきちんと整備することが求められ、特に活動拠点や活動内容は緻密な計算をした上で決定する必要があります。また、さらに踏み込んで言えばその活動内容に見合う人材を採用時にきちんと見極めることも大切になります。
さらにさらに踏み込めば、その活動内容が地域おこしに貢献するように設計されているべきであり、その地域おこし活動が将来のあるべき地域の姿を実現するための手段としてしっかりと関連付けされていることが大事だと思います。

別な言い方をすれば多くの人の協力が求められ、時間のかかる「地域おこし」に近道はなく、やるべきことを、ただただ愚直にするより他にないということです。

また、今回は活動費の活用状況についても踏み込んでいますが、お金ということもあり、地域という閉鎖的な環境ということもあり、グレーな部分も少なくないという現状が浮き彫りになりました。同時に明確なルールがないという制度の特徴から現場では公私の線引きに苦労している様子が伺えると同時に横並び意識が強い自治体の中でも線引きが不明確な状況ながら一つ一つ紐解き、より良い線引きを目指し創意工夫する自治体もとても少ないですが存在しており、その姿勢、その一歩が結果を分すリアルな現実も見ることができました。

さらに、近年は協力隊全体の人数の増加と合わせて複数人の隊員を採用する自治体も増えてきましたが、1+1を2以上にする隊員運用という意味ではまだまだ未開拓であり、隊員の配置方法やチームとしての活動・成果の出し方、評価の仕方、チームとしての任期満了後の生業作りなど新しい考え方が求められるエリアであり、それに成功した自治体が地域おこしにおける飛躍的な成果をあげるのではないかと思われ、積極的な取り組みを期待したいところです。

一方で地域おこし協力隊の皆さんが今回のことを踏まえて考えるべきことは、前回の繰り返しになりますが、応募前に処遇などの条件の確認や表面的な受け入れ態勢だけではなく、その自治体が将来のあるべき地域の姿の実現のためにどのような地域おこし計画を持っているか、その中で地域おこし協力隊に期待していることは何かをきちんと説明してもらうこと、そして、その説明を聞き、自分に合うかどうか判断ができるくらいに自分のやりたいことを明確にしておくことが重要だと思いますが、それに加えて活動費については活動内容が地域のためになり、成果が出始めれば必ず少しずつ改善されていくことから「諦めないこと」が大切だと思います。また、それが後輩隊員のより良い活動環境作りにつながることを忘れてはならないと思います。

また、チームとして協力隊同士が連携し、一つ上のゴールや1+1を2以上にする成果を目指すことがもっとあってもいいのではないかと思います。
特に起業という話になると多くの場合、遅かれ早かれ一人では限界がきます。その時に協力隊として苦楽を共にした仲間がいることが貴重だと思える瞬間が来るかもしれません。
そのためには自分自身が謙虚に日々切磋琢磨し自分自身を成長させる努力をすると同時に、仲間を思いやり、仲間が困っている時には自分を犠牲にしてでも手を差し伸べることも必要かもしれません。

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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