地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


受け入れ自治体の現状②

 
 

今回で第十二回となる「地域おこし協力隊の仕事」ですが、今回は前回に引き続き受け入れ自治体および受け入れ担当職員の皆さんを取り巻く環境についてご紹介致します。


なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

また、私自身は地方自治体で仕事をした経験があるわけではなく、あくまでも今回の調査の中でお話をお聞かせいただいた自治体職員のみなさんの話と一般的に公開・公表されている情報をベースにしていることをご留意ください。
また、あくまでも地域おこし協力隊に関わる職員の皆さんの話であるため自治体全般に対するものではないことも合わせてご留意いただければ幸いです。


今回のブログは、特に現在隊員のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんが受け入れ自治体の実態を正しく理解することをとおして自治体職員の方々との相互理解を深め、両者が信頼関係を構築すると同時に、協力しながらより良い地域おこし活動を行うことができる環境作りを行っていく一助になればと思います。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

頻繁な人事異動

これまでに何度かお話をさせていただいた通り自治体内では人事異動がかなり頻繁に行われているようですが、その異動には分野やキャリアの一貫性があまり見られず、職員の専門性を高めるためではなく、ジェネラリストの育成を目的に行われている傾向が強い点が自治体内での人事異動の特徴かもしれません。

自治体組織の中での人事異動の目的は人材育成の観点である「ジェネラリストの養成」や「管理職として仕事を行うための広い見識の習得」や業務の視点で見れば「不正防止」や「マンネリ化によるモチベーション低下の防止」などどちらかと言えば定型業務を効率的に行うことをを目的としているのではないかと考えられますが、変化のスピードが早く多様化した現在の社会環境においては上記のことから得られるメリットより「職員の専門性の損失」や「業務の連続性の損失のよる質の低下」というデメリットの方が相当程度大きいのではないかと感じます。
また、別な言い方をすればこのような社会だからこそ定型業務を効率的に行うという内向きな人材育成よりも変化を的確に捉えると共に多様化するニーズに効果的に応えていく外向きな人材育成が求められるのではないかと思います。

また、「ジェネラリスト育成」を目的とする人事異動を疑問視する専門家も多く、多様化により複雑化し、情報技術の発展により変化のスピードが早い時代において数年前に経験した業務を取り巻く環境は今の環境とは大きく異なることから、数年前に経験した業務内容は陳腐化している可能性も高く「ジェネラリスト育成」目的で人事異動を繰り返しても「ジェネラリスト育成」には繋がらないのではないかという考え方もあるようです。
さらに自治体における「ジェネラリスト育成」の根本的なニーズであると考えられる地域住民への対応を考えても、実際に地域住民の質問に答える上で情報的に古い中途半端な回答をするよりも適切な専門家につなげることの方が親切であり適切な回答ができるのではないかと考えられます。

また「不正防止」目的で定期的な人事異動をおこなうことも自治体に限らず銀行など多くの組織で行われていることですが、これは基本的にはその組織の構成員を信頼いないという「性悪説」の考え方がベースとなっていることから信頼関係の構築を阻害することも多く、人事異動を繰り返してもまた新たな悪意を持った者が現れ、その者が抜け道を見つけ出し結果的にいたちごっことなり「不正防止」に繋がらないだけではなく対応コストばかりが膨らむ上に、社員・職員の仕事の中での自由度や組織に対するロイヤリティーが失われ、決して効果的な解決策ではないと感じます。
「性悪説」で接するよりも職員を信じることにより一人一人の社員なり職員がプライドを持って自分の職務に取り組める環境を作ることが大切であり、プライドを持って自分の職務を遂行している人間はそのプライドを汚すようなことは決してせず、それが結果的に「不正防止」につながるものではないかと思います。

つまり、「ジェネラリスト育成」より「専門家育成」を目指す人事異動を行うことで、結果的に定型的な事務作業を「効率的」に行うことのみならず価値のあるものを「効果的」に生み出すことができ、価値を生み出す業務を遂行することを通して職員の中で自分の仕事に対してプライドが生まれ、結果的に不正が起きない組織環境が作り出されるということが理想なのかもしれません。

これらのことから、頻繁に行われる人事異動は、自治体のすべての業務に影響しているだけでなく、職員がプライドを持って仕事をしていくことに対しても少なからず影響していると考えられることから地域おこし活動や地域おこし協力隊以前の問題としてこれからの自治体のあり方を考える中で議論すべき重要なポイントと言えるのかもしれません。

頻繁な人事異動が招く地域おこし協力隊活動への弊害

頻繁に行われる人事異動が地域おこし協力隊の活動に与える影響の一つに地域おこし活動の非連続性があると思います。
具体的な弊害としては、第十回「定住状況と途中退任者の現状」でも触れましたが、人事異動により採用時と着任時で担当職員が変わってしまったことで起きた担当者と隊員の活動内容の意識のズレや担当者間の引き継ぎが十分に行われないことで起きる担当者の制度やその運用方法に関する理解不足に起因する運用の柔軟性の欠如などがあるようです。

また、担当者間の引き継ぎが十分に行えない背景には前回「受け入れ自治体の現状①」で触れたように複数業務の兼務で多忙すぎる職員の実情や縦割り組織のためもともと他の部署と業務上の連携が少ない組織文化であることから他の部署の職員がどのような業務を行っているか知らない職員が多いという環境要因も影響しているのではないかと考えられ、自治体組織における根深い問題の一つであるとも考えられます。

地域住民や議員の目

どの自治体職員の方も地域住民への説明義務については非常に重要視されており、それが意思決定のすべての要素といっても過言ではないほど強く意識されている様子を見ることができました。
そのため地域住民説明や議会での説明に多くの工数を割いており、特に議会における一般質問への対応が求められる3のつく議会開催月(3月,6月、9月、12月)は多忙を極めている様子が伺えました。
また、地域おこし協力隊の活動については議員の皆さんの注目度も高く、一般質問を受ける機会も多いとのこと、しかし、短期間で定量的な成果を出しづらい地域おこし協力隊の活動や成果について議会で報告することに非常に苦労されている様子も同時に見ることができました。

しかし、税金を預かり、それを効率的かつ効果的に活用し最大の効果を出すことが求められる自治体職員にとっては避けられないことであることは言うまでもなく、そのような職員の状況に不満を持つよりも、職員が説明責任をきちんと果たせるように隊員の皆さんが協力していく方が議員の皆さんや地域住民の皆さんの協力を得やすく、結果的に協力隊が活動しやすい環境作りへの早道なのかもしれません。

同時に言えることは、協力隊自身も税金により賄われている予算により活動環境が与えられていることから、地域住民に限らず国民に対して説明責任があると言え、そのことを重々認識した上で活動をしなければならないこともいうまでもなく、そう考えれば自治体職員と協力し、地域のためになる活動を行うだけでなく、それをきちんと地域住民に説明していくことに積極的に関与・協力すべきであると言えるのではないでしょうか。

また、職員・隊員共にきちんと説明ができるような活動をしなければならないという緊張感を持って活動に取り組むことがより良い成果に繋がるとも言え、それがそもそも執行機関である行政機関とそれを監督する役割も担う議会の健全な関係であるとも言えるのではないでしょうか。

つまり、地域おこし協力隊として活動する限りはその活動内容をきちんと説明する義務があり、職員と協力してきちんと行っていくことが求められますが、同時に説明義務をきちんと果たすことが活動しやすい環境づくりに繋がるとも言え、疎かにしてはならないことであると言えるのではないでしょうか。

地域住民や議員の目を過剰に意識することが協力隊活動に与える影響

地域住民や議員の目を過剰に意識することが地域おこし協力隊の活動に与える影響として最も大きく象徴的なものは活動費の運用の柔軟性ではないでしょうか。
第三回「自由度が高い制度ゆえの課題」でも触れたように隊員が活動費から購入しようとする物品が最終的に隊員の資産に資する可能性がある場合それを許可しない自治体が少なからずありましたが、その背景には特定個人を優遇するような措置ができない、つまり最終的に特定個人の資産に資する予算の拠出については地域住民に説明することが難しいという意識があり、地域住民や議員の目を過剰に意識することから生まれる制約の象徴的な事例かもしれません。

なお、こちらも第三回「自由度が高い制度ゆえの課題」にて触れたことの繰り返しになりますが、この活動費の取り扱いについて総務省が各自治体に通知している「地域おこし協力隊推進要綱」には詳しい記載がないためとある県と総務省に問い合わせたところ、結論は都道府県や国においては地域おこし協力隊の活動費の使途について一切制限をかけていないということが確認できました。

一方では、上記のような固定資産の購入についても地域おこし協力隊の活動と地域住民への説明義務の両方のニーズに応える方法を考え出した自治体もあり、必ずしも制約になっていない自治体もありました。
そして、そこには地域に対する熱い思いを持ち、自分事として地域おこしに取り組んでいる担当職員がおり、その方は縦割り組織も縦社会も乗り越え、自ら考え、行動し成果を残し、その結果頻繁に行われる人事異動に大きく左右されることなく、地域住民と共に確実に地域おこし組織を育て、地域おこし協力隊が活動できる環境の整備を行っておられ、どのような環境にあっても「思い」を持って、諦めずに自己研鑽を続けていくことが重要であることを教えられました。

温度差の大きい危機感と「地域おこし」への意識

一言で「地域おこし」といっても様々であり、限界集落を通り越し消滅都市化が進行している地域では「地域おこし」ではなく「村のこし」が、「業おこし」ではなく「生活をまもる」ことが求められる地域もあれば、まだまだそれなりの観光資源や特産品を持ち、その活用などに悩むいわゆる「地域おこし」もあり、その状況の違いから「地域おこし」に対する意識や危機感が自ずと異なってくるという現実もあります。

また、職員によっては当該地域に住んでいないケースもあるなど、同じ自治体の職員であっても地域に対する思いにもバラツキが生じる自治体の組織的・構造的な背景があることもわかってきました。

そして、この危機感の違いや地域に対する思いの違いが地域おこしへの取り組み姿勢に差を生み出し、結果として地域おこし協力隊の受け入れ体制、活動内容、支援内容などに大きな差を生む結果になっているのではないかと考えられます。

また、地域おこし活動を積極的に行い、その一環として地域おこし協力隊の導入にも積極的かつ、非常に上手に地域の利益と協力隊の利益を繋げている地域には、上述のように必ずと言っていいほど自分事として地域のあり方を考える特定個人の熱い「思い」があることが分かりました。

それは、たとえば「自分が生まれ育った集落を絶対に残したい」という思いや病院や介護施設で亡くなる高齢者が死の間際に「生まれ育った集落の自分の家で死にたい」と涙ながらに訴える思いを叶えたいという思いであり、そこには血が通った人の強い思いがあることが分かります。

担当者に依存した現在の運用

これまでお話ししてきたように地域おこし協力隊の受け入れを行う自治体には、公正公平という大前提の下、地域住民への説明責任、厳しい行財政改革による工数不足、頻繁な人事異動、強い縦割り組織、縦社会などの様々な組織文化があり、そのことで地域おこし協力隊の活動に制約がかかることも多く、不満を募らせる隊員も少なくありません。しかし、その一方で自分事として地域おこしを考え、自らの強い意志でそれらの組織文化を突破していく職員の姿や組織の大きな流れと戦いながらも休日を返上し隊員を支えようとする職員の姿も見ることができました。

現在のレベルの地域おこし協力隊運用を維持できている要因は特定個人の職員の意識やモラル、思いやりに依存しているとも言え、非常に不安定な状況であると同時に組織的に地域おこし協力隊を運用する体制を構築すべきであることはいうまでもありません。

地域おこし協力隊という視点でそれを受け入れる自治体の現状について触れてきましたが、もっとも大切なことは特定個人の振る舞いには必ずと言っていいほどその個人が所属する組織のルールや文化・慣習が影響しており、問題の解決を考えるのであれば特定個人の行いを責めるのではなく、その個人がそのような行いをせざるを得なかった背景をきちんと理解し、関連する組織のルールや慣習を見直すことが重要であるということではないでしょうか。

地域おこし協力隊としても受け入れ担当職員に対して不満もあると思いますが、その職員を取り巻く環境をきちんと理解し、共にその環境をも変えていくことが実は地域おこしの最初のステップなのかもしれません。

最後に

2015年に打ち出された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」のもと5カ年計画を策定し、それと呼応するように地域おこし協力隊の隊員数はここ数年で急激に増加しました。
しかし、「地域おこし」活動としては未だ道半ばであるためきちんと継続的な活動になるよう組織を整備し人員を配置している自治体はまだまだ少ないのが実情だと思います。
今回お話を伺う中で地域おこし活動に対する意識の違いや組織体制の整備状況にはバラツキが非常に大きく、長期的な目で見た場合、地域おこし活動の成果も大きくばらつくことが予想されますが、その結果を分かつ要素は、どんな組織文化があろうと地域への熱い「思い」を胸に、現時点で目の前にある地域おこしや地域おこし協力隊の運営に関する課題を把握し、変えることを恐れず、勇気を持ってこれまでのやり方を見直していくことではないでしょうか。

最近メディアなどによく登場するスーパー公務員のように個の職員の手柄を必要以上に報道する姿勢には思うこともありますが、何をするのも「人」であり、その人の「思い」が人を動かし、物事はより良い方向に向かっていくのも事実であり、だからこそ一人一人の「思い」と「行動」が重要になるのだと思います。

受け入れ自治体の職員の皆様は非常に厳しい環境にてお仕事をされておられると思いますが、それでも、皆さんだからこそできることはたくさんあると思います。ぜひ、自分を信じ、最初の一歩を踏み出す勇気を持って取り組んでいただければと思います。
なぜなら、その一歩が皆さんの仕事に対するプライドを育むことであり、成果を分かつものだからです。

また、隊員の皆さんにおかれましては、ぜひ積極的に職員の皆さんとお話をし、職員の皆さんの環境・立場も理解した上で活動を進めてほしいなと思います。
本文中にも記載しましたが、地域おこし活動には自治体職員の力が欠かせません。また、自治体職員の皆さんとの協働度合いにより大きく成果は変わってくると思います。
真の協働体制を構築すべく自治体の仕事の仕方、職員の皆さんの置かれている立場について積極的に勉強してみてください。

以上、今回は「受け入れ自治体の現状」の後編ということでお伝えしてきましたが、次回からはガラッと内容が変わり、これから隊員になろうとされている方、現在現役の隊員だけどなかなかうまくいかない方向けにこれまでお伝えしてきた現状の中でも確実に前に進んでいる先輩隊員の考え方や姿勢についてお伝えしていきたいと思います。

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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