地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


これから隊員になる人へ① 〜応募する前に〜

 
 

これまでお話してきたとおり地域おこし協力隊制度は大いなる可能性を秘めている制度ですが、隊員からの見方の一つとして任期に制限があり任期後の保証が何もないリスクの高い制度であるという見方をすることもでき、隊員になる人にとってはしっかりと備えていないと人生の貴重な3年間を無駄に過ごすことなることも少なくありません。

そのため、これから数回にわたり「これから隊員になる人へ」と題し、隊員の皆さんとお話をする中で隊員活動がうまくいっているなと感じる隊員の皆さんの共通項として感じたことや私個人の経験・考えなどを踏まえて隊員活動を有意義なものにするための考え方・行動指針・勉強すべきことなどについてお伝えしていきたいと思います。

隊員活動中の基本的な姿勢や考え方、隊員としてすべき行動(Do’s)、すべきではない行動(Don’t)、隊員活動の延長として起業を考えるポイントなどについて触れていきたいと思いますが、まずは今回はその第一弾して「隊員になる前に」ということで隊員に応募する前に意識した方が良いと思うことについてご紹介いたします。

現在4,000人の隊員がおられ、それぞれの隊員の皆さんの強み・弱みはそれぞれであることからそれを活かした隊員活動の取り組み方、考え方・姿勢は千差万別ですが、それでも、隊員の皆さんが一度は通る土台となる共通項は確実に存在すると思います。
本記事をお読みいただいているみなさんのより良い隊員活動の一助になれば幸いです。

なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。


*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

自分を知る(強み・弱み、価値観)

地域おこし協力隊の仕事というのは決して楽なものではなく、個人的には万人に適した仕事ではないと思います。
その理由については過去12回のブログを読んで頂ければ分かっていただけると思いますが基本的には多くの困難と課題が待ち構えている活動であることから心身共にキツイ仕事になると思います。(だからこそ成長するのですが)
また、そもそも地域に貢献することを前提として報酬をもらうわけですから基本的には利己ではなく利他の意識が求められる仕事でもあると思います。

そんな中で地域おこし協力隊の活動を通して地域に貢献しつつ、自分の将来に繋がる活動にしていくためには、まず自分のことをよく知ることが重要だと思います。具体的には、自分の強みや弱み、自分の価値観の理解が不可欠になると思います。

もっと平易な言い方をすれば自分が「したいこと」「できること」「すべきこと」「やりたくないこと」ということになると思いますが、地域おこし協力隊の場合には、それぞれについて自分と地域の両方の視点から整理することが求められると思います。

「したいこと」・「したくないこと」という自分の価値観、「できること」という自分の強み、「すべきこと」という自分の弱みですが、制度や応募を考えている地域について出来る限りの情報を収集した上で地域おこし協力隊の仕事として期待されることを理解し、それに応えられる価値観を自分がもっているかをきちんと考えるというステップがとても重要になると思います。
さらに、応募地域にて期待される活動に対して自分の強みを活かせる領域はあるか、自分が成長することができる機会(弱みを克服する機会)があるかということを考えるということだと思います。

これらのことを応募前に自分の中で十分整理し、まずは自分をきちんと理解すること、そして、出来る限り協力隊制度や応募地域やその活動内容を理解し、自分の強み・弱み、価値観と照らし合わせることが隊員活動を有意義なものにする上で、そして皆さんが自分自身の人生の舵取りをする上で非常に重要になると思います。

地域おこし協力隊の前に自分の将来を考える

地域おこし協力隊に応募することを考える上で自分の強み・弱みや価値観を理解することは重要ですが、実はそもそもの話として自分の将来設計にとってもとても重要なことだと私は思います。

生きていくためには誰しも仕事をしなければならず、どうせ仕事をするなら自分の強みを活かせる仕事の方が経済的にも心理的にいいですよね。
また、当然人生は仕事だけではなく、その他に家族・友人・趣味など人により人生において大切にしたい物事は様々ですが、この「自分の人生において大切にしたいこと」が価値観そのものであり、その価値観を大切にする生き方が「自分らしい生き方」であると言えると思います。

しかし、「自分らしい生き方」を勝ち取ることは優しいことではなく、それなりの戦略が必要であり、その戦略が「将来設計」だと私は考えています。

つまり、自分らしく生きるためには、今の自分をきちんと理解し、今後何をすれば良いのか、どんな経験が必要か、どんな仕事なら価値観に沿った生き方ができるか、を考え、「今の自分」と「自分が目指す自分」のギャップを埋めていく戦略が「将来設計」だと私は思います。

地域おこし協力隊に関するブログで何を書いているんだ!とお叱りを受けそうですが、この辺の整理をしないまま地域おこし協力隊に着任すると明確な目的もないまま地域おこし活動をすることになりますが、自分の将来に繋がる明確な目的がなければ困難の多い地域おこし協力隊の仕事を前向き捉えることは難しくなります。
さらに、明確な目的がない人は人に使われることが多くなり、結果的にやりたくない仕事や自分の将来に繋がらない仕事はかりをやらなければならないだけでなく、任期終了後はまた振り出しに戻るということになりかねず、だからこそ敢えてここでこのような話をしています。

もちろん、どんな経験でも将来の何かに繋がっていくためおろそかにしてはならないとは思います。また、すべての行動を自分の描く将来の姿につなげる計算をすることは不可能ですが、大事なことは自分で自分の人生をコントロールしようと自分で考え、決断することだと思います。また、自分自身の明確の目的の元に行っている活動はやはり充実感ややりがいが異なってくると思います。

地域おこし協力隊の仕事は、短期的に見れば地域貢献活動であり、お金が貰える仕事ですが、中長期的に見れば自分自身が将来ありたい自分に近づくための手段であると考えるべきです。
自分自身の人生を自分自身で舵取りをする上でも自分自身の将来設計をきちんとした状態で目的を持って地域おこし協力隊に挑むことが重要だと思います。

隊員活動を自分の将来につなげる思考法

上記の話の続きになりますが、隊員活動を通して自分自身が克服したいこと、得たい経験・知識などを明確にすることは将来の自分のためにとても重要であり、より具体的に考えることが重要だと思います。

例えば自分の将来のために自分が苦手とするコミュニケーション能力を向上させたいと考えている人がいるかもしれません。そうであればそれが隊員活動において自分自身が将来のために克服したいことになり、その明確な目的に向けて、様々な背景を持つ、様々な世代の方々と積極的にコミュニケーションをとるという経験の蓄積のために地域の様々なイベントや任意団体の活動に積極的に参加することを考えるかもしれません。また、自分の成長のためという明確な目的があれば人と話すことも嫌ではなくなるかもしれません。

将来起業を考えている人であれば「事業計画作り」や「資金調達」が非常に重要になりますが、地域おこし協力隊の活動計画とその予算作り、役場内や地域内での合意形成などを積極的に進めることで「事業計画作り」の知識や「資金調達」に必須となる合意形成能力、地域で起業するときに理解しておいたほうが良い役場の仕組みなどの知識を身に付けることができるかもしれません。

あまり良い例ではなく恐縮ですが、大事なことは自分自身が持つ目的をできる限り具体的にするだけではなく、それの手段となる具体的な「行動」を設定することだと思います。

地域おこし協力隊の活動の中には実は様々な挑戦機会が含まれており(そのため個人的には人材育成には非常に有効なフィールドだと思っています)、目的意識を持って取り組むことで自分が目指す将来の姿に近づく自己成長が期待できると同時に一つ一つのことに対して前向きに取り組めるようになることから活動自体を楽しめるようになるのではないかと思います。

やりたいことを実現できる地域・活動選び

自分の強み・弱み・価値観の整理、そして将来設計、さらにはその将来計画の中で地域おこし協力隊活動を通してどのような経験・知識の習得を期待しているかが明確になれば、あとはそのニーズに基づき求める経験ができる地域・活動を選べばいいと思います。

2017年3月末現在で全市町村の半分が地域おこし協力隊を導入しており、自治体あたりの隊員数も確実に増加していることからある意味売り手市場の状態であることからチャンスはそれなりになると思います。
なので募集要項を見るだけではなく、自治体職員、先輩隊員、活動に関係する地域住民などできる限り多くの方から話を聞き、さらに自分自身の目と耳をフルに使い、地域への理解・活動への理解を深めた上で活動地域・内容を選んでいくことが重要だと思います。
また、できることならその地域に足を運び、自分自身の目で客観的にその地域を見ることもときには必要だと思います。
応募前に職員やひ地域の方々と話す機会があれば自分が地域おこし協力隊を通して実現したいことを話し、それがその地域で実現できるか率直に聞いてみるのもいいかもしれません。
これらの活動を怠ると自分自身のやりたいことは明確だけど、着任後にそれができる環境にないということに気づくという協力隊の皆さんがよく陥る状況になると思いますので、時間の許す限り、いやできる限り時間を作ってしっかりと調べるべきだと思います。

また、もし自分が求めるような地域・活動内容がなければ、自分自身で可能性のある地域を見つけ出し、自ら地域おこし協力隊を募集するよう呼びかけてもいいと思います。
きちんとした地域調査と将来設計を踏まえ、今自分がやりたいことを伝えられれば賛同を得ることはそれほど難しくないかもしれません。

定住しても良いと思う地域選び

地域おこし協力隊という仕事に従事する上で避けては通れないことは定住する・しないの判断だと思います。

基本的に人は自分が住む場所を自分で選択する権利があり、誰にも強制されるべきではないという大前提を踏まえた上でのお話ですが、私個人としては定住意識がない地域の協力隊はすべきではないと思います。

なぜなら、地域おこし活動を通して地域住民や職員は往々にして今までのやり方を変えることを求められますが、「変える」ことには大きなエネルギーが必要であり、それ相応の覚悟がなければなかなか一歩を踏み出すことはできません。
人は鏡だとよく言いますが、それだけの覚悟を人から引き出そうと思えば、自分自身もそれなりの覚悟がないと人を動かすことはできません。
そして、自分の覚悟を示す協力隊であれば誰にでも取れる有効な手段の一つが「定住意識」だと思います。

また、定住意識を持って臨んでいる場合とそうではない場合では、自ずと自分自身の覚悟が違ってきますので、活動や人に対しての踏み込める深さが自ずと異なってくると思います。

つまり、定住意識とは言葉を変えれば地域へのコミットメントの強さであり地域住民とつながりを強く持つ覚悟とも言えると思います。また、その覚悟を感じるからこそ地域住民は地域おこし協力隊の活動に共感し、協力してくれるのだと思います。

しかし、一方で地域おこし協力隊に限らず地方に移住し10年、20年が経ち、その地域で事業を立ち上げ結果を出している人でさえも、地域との絆を結ぶのは難しく、移住者はいつまでたっても移住者だと感じているという話しもお聞きしており、決して短期間で成せるものではないということも十分に理解し、根気強く取り組んでいくべきことかもしれません。


また、人生は不確実性の塊ですので自分のコントロール範囲を超えたことに起因し、途中で定住への考え方を変えざるを得ないこともあると思います。
そのような場合には、ただただ誠実に対応し、地域のためにも自分のためにも任期中はとにかく地域に尽くしきり、任期を全うすべきだと思いますが、少なくとも初めから定住意識のない地域に応募・着任し、協力隊活動をすることは、避けた方が良いと思います。

一方で受け入れ自治体の視点として、様々な経験をすべきこれからの社会を担う20代・30代の若者たちを地域に縛り付けておくことが果たして本人のために良いことなのかという考えも当然あると思います。また、別な視点から見れば、人口構成に偏りが大きく多様性が見られない地域において20代・30代の若者だけを協力隊として積極的に採用することが最終的に地域のため、隊員個人のためになるのかというと議論もあるかもしれません。
何が言いたいのかといえば、隊員の皆様向けのメッセージからは少し脱線してしまいますが、隊員のみなさんにコミットメントを求めるのであれば、受け入れ自治体のみなさんも地域の将来を踏まえた地域おこし協力隊の限らず移住者を受け入れていくべきだと思います。
そういう意味では神山町の逆指名方式による移住者募集はまさに目指す地域の姿から逆算して今必要な物事を考えており、非常に有効な手段ではないかと思います。

地域おこし協力隊の責任と覚悟

上記で話したことを実践されている方であれば言うまでもないことですが、地域おこし協力隊は、「地域おこし」を仕事とし報酬をもらっている以上その報酬に報いる最大限の努力をすべきだと思います。

この考え方自体は他のお金をもらってする仕事となんら変わりはないと思いますが、異なる点は「地域おこし」という仕事は定義が幅広いこと、さらにはそのため「地域おこし」の仕事の成果が見えづらいということがあると思います。

つまり、一般的な仕事であれば一定の業務に給料を払うという明確な構図があり、会社と与えられた業務をこなす社員ということで関係性が見えやすく、そのため報酬を受け取る側からすれば義務が分かりやすく、同時に雇用者側からすれば報酬に対する義務が果たされているかの監視の目も行き届きやすいですが、地域おこし協力隊の場合は、活動が幅広く、業務の定義とその成果の定義が難しいこと、同時に採用する自治体が協力隊の雇用における経済負担がないことから「報酬」と「義務」の関係が双方に合間になる傾向が強いように感じます。

また、このような構造的な背景は、安易に採用する自治体・安易に応募する隊員も生み出す遠因にもなっていることはこれまでのブログの中でも再三触れてきたとおりですが、このような双方の甘えが地域おこし協力隊への期待や地位がなかなか上がらない要因の一つではないかとも考えられます。
そして、地域おこし協力隊への期待が低いために地域おこし協力隊の活動費や報酬を上げるという話にならず、一生懸命やっている隊員にとっては環境の改善がなかなか進まないことへの苛立ちにつながっているという側面もあると思います。

このような甘えの構造の中で隊員活動に慣れてしまうと、報酬に対してきちんと応えていない状況に長くいるとそれが当たり前になり、期待に応えようとする意識が薄くなることから、期待に応えるために求められる自分の能力を伸ばす自助努力をしなくなるのではないかと思います。
また、報酬に見合う仕事をしていないという引け目が、自分自身への自信を奪うことにつながり心理的にマイナスの影響が大きいように思います。

一方で、上記とは逆の状況ですが地域おこし協力隊の仕事自体に明確な定義がないことから仕事の限界がなくなることも少なくなく、そのためオーバーワークになる傾向も強いです。しかし、一方で役場はブレーキをかけることはあれど、活動に見合った形で処遇を変えることはなく、どんなに一生懸命活動をしても、その気持ちが報いてくれることはないため、がんばっても何も変わらないということに疲弊してしまう隊員もおられます。

つまり、地域おこし協力隊の責任や報酬に報いる覚悟は自分次第である部分が大きいということであり、だからこそ、他の仕事以上に受け身になるのではなく主体的に自分自身でマネージすることが重要なのだということです。

そして、そのためには、まずは安易に応募せず、自分をしっかりと理解すること・自分の将来設計をしっかりともつこと、そして、その将来設計の中での地域おこし協力隊の仕事の位置付けを明確にした上で地域おこし協力隊に挑戦することが大切なのではないかと思います。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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お電話:080-4170-2703
メール:kota.ishibashi@visualization-labo.com
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地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
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