地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


成り手の現状

 

過去3回のブログで地域おこし協力隊の可能性制度・導入状況などの基本的な情報地域おこし協力隊制度の特徴とその課題について触れてきました。
その中で制度として大いなる可能性を秘めていること、そして、近年急速に拡大していること、かつてないほど自由度のある制度であること、さらにはその自由度の高さがゆえに現場ではいくつかの課題が生まれていることをご紹介いたしました。
そして、今回を含めこれから数回に渡り、より良い方向に変えていくために理解することが欠かせない地域おこし協力隊の現状について地域おこし協力隊のみなさまにご協力いただいたアンケート調査*1の結果および直接取材から浮き彫りになった内容をご紹介していきたいと思います。


地域おこし協力隊の現状シリーズの第一回目として「地域おこし協力隊の成り手」にスポットを当てたいと思います。

なお、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることから今回お話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測した傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

今回のブログは、特に現在隊員を受け入れている自治体の職員の皆さんやこれから隊員を募集することを考えておられる自治体の首長を始め、関係者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんがどのような背景を持ち、どのような思いで隊員に応募してきたか、活動中に感じている不安はどんなものかなど隊員の皆さんの現状について受け入れ自治体の皆さんに知っていただくことで、隊員の皆さんへの理解を深めていただくと同時に地域おこし協力隊の成功の必須要件である隊員と受け入れ自治体および職員との間の信頼関係を築く一助になれば幸いです。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

成り手の多くは20代・30代の将来を嘱望される若者

上記アンケートおよび総務省が公表しているデータの両方が指し示していることは、成り手の大半が(右の当社アンケートの結果では約7割)20代・30代であるということです。

地域おこし協力隊制度は、最終的に移住・定住者を増やすことを通して地域を活性化させることを目的とした制度であることから高齢の方よりこれから結婚、出産、子育てを控える若い方を採用したいという方向に向かうのは募集自治体にとっては自然な発想かもしれません。

しかし、同時に言えることはこれから結婚・出産・子育をする世代であり、同時にこれからの日本社会を担っていく世代であるということから社会全体で育てていくべき存在であるともいえると思います。

家族構成

協力隊として活躍されている方の年齢層から納得は行きますが、上記アンケートでは地域おこし協力隊になる前のご家族構成も聞いており、成り手の約8割を占めているのは独身者であるという現状が明確になりました。

しかし、中には夫婦や夫婦と子供、父(母)と子供という方もおられることからある種の多様性があることも見て取れます。

私が取材をさせていただいた方の中に夫婦とお子さんを連れて地域おこし協力隊に着任された方がおられますが、その方の場合は夫婦で地域おこし協力隊に採用されているため生活が成り立ちますが、そうでなければ現在の地域おこし協力隊の報酬水準で家族を養っていくことは難しいのが現実だと思います。

しかし、アンケート結果を分析したところ、夫婦で着任された方の方が協力隊活動を通して感じる孤独感やつらさが相対的に低く孤独感やつらを感じている方の割合が半分以下という結果*2もあり、新しい環境・新しい仕事・新しい人間関係のため多くの困難を伴うことの多い地域おこし協力隊であるがゆえに、心を許せるパートナーが近くにいることは大きな心の支えになることはいうまでもないことですし、田舎においては所帯を持たなければ一人前と認めないという古い考えの方も少なからずおられるのではないかと思われ、その観点でも夫婦で着任する方が最初のハードルを下げるという意味では有効なのかもしれません。

また、マクロに見れば地域おこし協力隊の可能性でも触れましたが多様な年齢層・家族構成の地域住民が存在することが新しい価値の源泉である多様性を生み出すことを考えると、これからはご家族がいる方でも地域おこし協力隊に挑戦できるよう子供や家族を考慮した採用体制の整備も求められるのではないかと思います。

*2 : アンケート調査結果 家族構成別 孤独感・つらさの有無
http://www.voice.visualization-labo.com/analysis/report4_4-1.php

着任前の職業

アンケートにおいて地域おこし協力隊に着任する前の職業についてもお聞きしており、その約7割が会社員と学生で占められていることがわかりました。

厚生労働省が実施している労働力調査の2016年の結果*3を見ると全就業者数は6,440万人ですが、そのうち雇用者(つまり会社員)は5,729万人(約89%)を占めており、そのうちの正社員・職員数は3,364万人(約52%:全就業者に占める割合)、非正規社員・職員は2,016万人(約31%:全就業者に占める割合)を占めています。母数の違いのため誤差が大きいですが厚生労働省のデータから右のグラフ(スマホの場合は上記グラフ)の「その他」は非正規の方々ではないかと推測されます。

また、新卒で協力隊という難しく、そして、厳しい仕事に挑戦している方が少なくないことに驚かされましたが、近年は社会起業家という言葉がよく使われるようになってきたことが表すように社会全体として社会貢献意識が高まってきているという背景やワーキングプアという言葉が表すようにフルタイムで働いてもギリギリの生活の維持もままならない人が多いという実態を目の当たりにしている学生が地域おこし協力隊という真新しい制度に可能性を見出しても不思議はないのかもしれません。また、自治体の立場からすれば、より若い人材を採用することの延長線上で新卒の方を採用するという発想になることも十分考えられるのではないでしょうか。

*3 : 労働力調査(基本集計) 平成28年(2016年)平均(速報)結果:http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf

様々な背景を持つ成り手たち

上記の着任前の職業のデータだけを見るとさほど違和感はないと思いますが、実際に直接地域おこし協力隊の方々にお会いし、お一人お一人のそれまでの歴史をお聞きしていると現実はもっと厳しいという印象を受けました。

たとえば、私がお会いした方の中には、大学を卒業し就職活動をしたものの正社員の仕事がみつからずアルバイトや派遣社員の仕事で生活をつなぎ、最終的に地域おこし協力隊に行き着いた方、自営業者だったが体を壊し、それまでの仕事ができなくなったためキャリアチェンジを余儀なくされ地域おこし協力隊に応募された方、経営者だったが諸事情により多額の負債を背負い会社を手放さざるを得なかった方、有名大学を卒業し志高くNPOに入社したブラック企業であった方など、現在の社会状況を写したそれぞれの背景や事情をお持ちの方々が地域おこし協力隊を数少ない再挑戦の機会として活用している姿を見ることができました。

もちろん、社会貢献活動や社会起業に注目が集まる現在の時代背景もあり、中には立派な経歴・職歴をお持ちの方も地域おこし協力隊で活躍されているケースもありますが、私が直接足を運び、地域おこし協力隊関係者からお話をお聞きする限りは、ごく一部のようです。

また、上記の通り新卒で地域おこし協力隊に応募される方も少なくなく、実際に新卒で地域おこし協力隊として活躍されている方にお話をお聞きすることができましたが、その印象としては本人の口から「お試し感覚」という言葉もでるくらい地域おこし協力隊ということで殊更に力が入っている様子もなく、比較的自然体に近いという印象を受けました。また、話を深く聞いていくとその根底には「思い」があると同時に、上述の通り、殊更に力がはいっていないためか地域の状況を先入観なく正確にとらえている印象を受けました。ただ、同時に自分が無力であるという認識も誰よりも強いため行政機関や地域住民に危機感がなく、やる気がないと感じると、あっさりと諦めてしまう傾向も強いと感じました。

さらに、新卒で隊員になられた方と一緒に仕事をしている職員の方にもお話をお聞きすることができましたが、新しいことを生み出すことが期待されている隊員に新卒で挑戦することにはそもそもかなりの困難を伴うという話をされていました。また、基本的には任期満了後には定住してほしいと考えているが、若い人が学習機会や挑戦機会の乏しい地域に定住することはその人個人のこれからの人生にとってプラスかどうか悩まれている様子も見られました。また、一方では新卒で隊員になられた方は知識と経験が乏しさこともあり一人で活動することが難しい中、本来それをサポートすべき職員の実態としては兼務が重なり余裕がなく万全なサポートができない状況に対して忸怩たる思いでおられるという現実もあり、新卒で地域おこし協力隊に応募すること、採用することは双方にそれなりの覚悟と準備が必要ではないかと強く感じさせられました。

地域おこし協力隊は再挑戦の場

協力隊に応募された方を「逃げた人」、「協力隊以外に選択肢がなくなった人」の行き場などと表現される方も少なくなく、アンケートにおける「孤独感やつらさの要因」という設問に対しても「都会で失敗して田舎に逃げてきたと誤解されたこと」という回答があり、直接お話をお聞きする中でも似たようなご経験をされた隊員が少なからずおられました。

しかし、人生には予期できない様々なことが起きることは必然であり、誰しもそのような難しい環境に陥る可能性があることを踏まえて考えると難しい環境にいる中でも自ら考え、行動をし、人生を切り開こうとしている地域おこし協力隊の姿勢はとても前向きで素晴らしいものだと思います。
また、上記の観点から改めて地域おこし協力隊制度の役割を見てみると、本制度は様々な背景を持つ方々に就労の新しい形を提供しているという側面も備えていると考えられ、先述した現在の社会環境を踏まえると社会的な意義がとても大きい制度ではないかと改めて感じます。

また、近年は協力隊の数も増えたことから、このように様々な年齢層・家族構成・経験を持つ隊員が、上下関係なく同じ地域おこし協力隊という肩書きで仕事をすることも多くなると思います。
その場合、個別に目標設定と責任が明確に定義されていれば基本的には問題にはならないと思いますが、複数の隊員が一つの責任・一つの目標を共有する場合には、役割分担や決定権が不明確となることが強く、隊員間の揉め事の原因となっている様子も見ることができ、複数隊員を採用する場合には隊員それぞれの力を最大限活かせるよう目標設定やその管理の仕組みやチームマネジメントの仕組みが別途求められ、人数を増やしたいからといって安易に隊員の数を増やすのではなく、しっかりとした検討を行う必要があると思います。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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お電話:080-4170-2703
メール:kota.ishibashi@visualization-labo.com
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地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
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