地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


成り手の思い・苦しみ

 
 

前回のブログでは地域おこし協力隊の成り手の皆さんを具体的にイメージいただくことを目的にどのような年齢層・家族構成なのか、着任前の仕事など表面的な部分についてご紹介しましたが、今回は地域おこし協力隊のみなさんの内面に迫りたいと思います。
どのような思いで地域おこし協力隊に応募されたか、活動が始まってからどのようなことに苦しんでいるかなど、地域おこし協力隊のみなさんの内面の思いをご紹介できればと思います。


なお、前回同様協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。

さらに前回同様、今回のブログも特に現在隊員を受け入れている自治体の職員の皆さんやこれから隊員を募集することを考えておられる自治体の首長を始め、関係者のみなさんにぜひ読んでいただきたい内容になります。
協力隊の皆さんがどのような背景を持ち、どのような思いで隊員に応募してきたか、活動中に感じている不安はどんなものかなど隊員の皆さんの現状について受け入れ自治体の皆さんに知っていただくことで、隊員の皆さんへの理解を深めていただくと同時に地域おこし協力隊の成功の必須要件である隊員と受け入れ自治体および職員との間の信頼関係を築く一助になれば幸いです。

*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

地域おこし協力隊の志望動機

当社が行った上記のアンケートでは地域おこし協力隊のみなさんに志望動機も聞いており、その結果が右の円グラフ(スマホの場合は上のグラフ)になります。

「地方創生・まちづくりに興味があった」や「田舎暮らしがしたい」という理由が全体の約4割を占め、続いて「起業の一歩として」や「キャリア形成の一つ」という自身のキャリア形成の一手段と考えている方々で凡そ3割を占めるという結果になりました。

そして、意外にも「地域をよりよく変えたい」という高い志を持って挑まれている方は1割もいないという現実も同時に見ることができました。

この結果から思うことは、前回ブログで記載したように様々な背景をお持ちの方が応募し、活動されるわけですが、そこには良くも悪くもとりあえず「お試し」感覚で応募する方も少なくないという現実があることです。

事実、直接取材させていただいた協力隊の方々からも地域により程度の差こそあれ同様の声が聞かれており、真剣に地域おこしに取り組み、その地域に骨を埋める決意で挑まれている方々からすると中途半端な気持ちで地域おこし協力隊に応募してくる方に対してあまり良い印象は持つことができない様子が伺え、嫌悪感すら感じました。

また、アンケートにおける「後輩隊員へのアドバイス」という自由解答設問でも下記のような声が聞かれ、やはり地域への思いや地域おこし活動自体に対する情熱を持っておらず、軽い気持ちで応募する方も少なからずいるという現実を見ることができます。

「定住の意思もないのに軽い気持ちで応募しないこと。行ったこともない地域よりも、愛着のある地域を選ぶべき。」北海道 30代 男性

「軽い気持ちで志さないで欲しい」中国地方 30代 男性

「その地域で何をやりたいのか、自分は何をしたいのか、興味のある分野・自分自身のスキルを分析した上で応募してほしい。なんとなく応募して協力隊として活動すると、任期終了後に何をやりたいのか分からなくなり、悩み・苦しむことになる。」中部地方 20代 男性

「退任後の永住が基本の思考でないと、直ぐに見抜かれて放置されるので必ず永住する意識で臨む事」中部地方 40代 男性

打算と現実

この状況について改めて制度の観点から見てみると、活動中は住民票を移し移住すること、任期満了後は前向きに定住を考えること以外は特に条件もないことから「お試し」感覚の隊員を咎めるような条項は何もなく、それがこの制度の大きな強みの一つであるとも言えます。

しかし、協力隊としての活動が進むにつれ、隊員のこの「お試し感覚」意識が、自治体職員や地域住民との意識のギャップを生み出し、それが故に自治体職員や地域住民に信用してもらえず、受け入れ自治体の職員や地域住民との信頼関係構築の妨げとなっている様子も伺えました。

それ故、どんなに素晴らしい意見や活動も認めてもらうことが難しくなる傾向が強く、その結果自分の活動が定まらず結果を出せないというジレンマへと繋がり、外的にも内的にも活動を妨げられることになることも少なくないことから、どのような意識で協力隊に応募するかという点は決して無視できない非常に重要な要素ではないかと感じます。

地域おこし協力隊の悩み

アンケートでは隊員のみなさんの任期中の孤独感やつらさの有無についても聞いていますが、その結果およそ二人に一人の割合で孤独感やつらさを感じていることが分かりました。

また、その孤独感やつらさの要因について複数選択式で回答いただいたところ最も多く選択された回答は「やりたいことができないこと」で18%、次に「明確な仕事がなかったこと」および「愚痴や悩みを話せる相談相手がいなかったこと」が同じ割合で17.3%、次いで「人間関係が複雑だったこと」が14.4%となっており、この4つの要因で全体のおよそ7割を占めるという結果になりました。

また、「仕事が認められなかったこと」を選択した方が9.4%おり、上記の「やりたいことができないこと」「明確な仕事がなかったこと」を含めると活動そのものに関する内容が5割弱を占めるという結果となりました。

さらに、直接お話を伺った隊員のみなさんからもアンケートの結果と同様に「やりたいことができない」ことから歯がゆい思いをしているという声が多く聞かれ、その状況の深刻さが伺えます。

隊員に共通する将来への不安

隊員の方々のミッションや活動拠点・内容はそれぞれ異なっていますがそれでも共通している点はみなさん隊員期間中に絶対に消すことができない根本的な不安感を持って活動されているということです。

それは将来に対する不安感であり、3年という任期の中で、何の保障もなく、何の確約もない状況で自分の力だけを頼りに任期満了後の生業を見つけ出さなければならない苦しさ、しかし、目の前には地域おこし協力隊として自治体から期待されていることがたくさんあり、それをこなしていくと時間があっと言う間に過ぎていってしまい、ますます焦りとともに不安感が押し寄せてくる状況であることをお話をお聞きする中で感じ取ることができました。

自治体職員との相性

上記のようにとにかく手間が増えるようなことはしないでほしいと考えている担当職員のもとに地域おこしに大した思いもなくお給料がもらえれば良いと考えている隊員が配属された場合は、双方の思惑が低いところで一致しているため大きな摩擦は起きず粛々と時間だけが経過していく形になるのだろうと思われますが、地域おこしに対して熱意を持っていらっしゃる優秀な方が配属された場合、最悪の組み合わせとも言える残念な結果になることが多い印象を受けました。

隊員としては、自分なりに地域のことを考え、一生懸命提案を行っても全く受け入れてもらえないため求められる仕事をきちんとこなした上で空いている時間に自分なりに地域おこしにつながる活動をしても、担当職員から認めてもらえないだけでなく、見えないところで勝手に何かしていると捉えられ、その結果自分の見えないところで勝手に活動をする隊員に対して職員の苛立ちが募り、最終的に隊員の業務時間外の行動にまで制約をかけるというケースもあるとお聞きしました。

このような状況になってしまうと、基本的に地域や役場の中では部外者である隊員が圧倒的に不利であり、仮にその地域にとって良かれという思いから行っていたことであっても、自治体の担当職員の理解を得られないことからあっと言う間に厳しい状況に追い込まれてしまうだけでなく最終的には自主退職という形でやめさせられるケースも少なくないのではないかと思います。

この事例は、幸いにも自己都合退職に追い込まれる直前に自治体都合退職となり、退任した協力隊の失業保険への影響はありませんしたが、実際はそのような実態が表沙汰になることはほぼなく、そのため、このような状況となり自己都合退職に追い込まれた隊員も少なからずいるのではないかと思われます。

非常に自由度の高い制度であるため担当職員の考え方への依存度が大きくなる傾向が強いこと、さらには構造的に慢性的な人手不足という課題を抱え、頻繁な人事異動が行われる自治体では担当職員の隊員の受け入れに対する意識を後ろ向きにさせる要素が揃っており、どの自治体でも起こりえることではないかと思います

孤立する隊員

今度は別なケースになります。
複数の隊員が採用されているケースであっても多くの場合、一地域に一人の隊員、一活動拠点に一人の隊員という形で配属されることが多いですが、特にミッション型で小規模な地域団体などに配属される場合には、隊員と受け入れ担当の職員との距離が遠くなってしまうこともあり閉鎖された環境の中で孤立感を強く感じてしまう隊員が少なからずいることが分かりました。

たとえば、NPOや地域の任意団体、個人事業主など地域団体に配属された隊員の場合、後継者候補という具体的な期待をされていることもあり、その期待像に合わない場合や隊員自身が思い描いていた活動イメージと異なる場合などは、比較的容易に人間関係が崩れる傾向があり、上述のように役場の担当者とも距離があることから信頼関係が構築できていないケースも少なくなく、結果的に逃げ場がなくなり、孤立してしまう隊員の姿も見られました。
このようなケースでは最悪の場合、隊員ご自身の心が壊れてしまうことも少なからずあるとのこと、実は表からは見えない地域おこし協力隊の影の部分の一つなのかもしれません。

もちろん、このようなケースばかりではないですし、心を壊す原因としても隊員自身の性格や生活習慣・病歴などに起因することも多いとは思いますが、受け入れ自治体としてはこのようなケースが起こり得ることを十分に理解し、隊員がいつでも相談できるような環境を整備することはもとより、活動拠点に定期的に足を運び、様子を見るだけでなく、メンタルヘルスのチェックを定期的に行うなどそれ相応の配慮が必要ではないかと思います。

地域の政治、住民のやっかみや誹謗中傷

当社が行ったアンケートの中で地域住民の地域おこし活動への協力度について聞いており、その結果が右の円グラフ(スマホでは上のグラフ)になります。
1を最低、10を最高とする10段階から協力度を選んでいただきましたが、その結果、協力度の平均値は6.47となり、真ん中の値が5.5ですので隊員の感覚としては地域住民は比較的協力的であると感じていることがわかりました。

また、同様に地域住民の定住への期待度について聞いており、その結果が右の円グラフ(スマホでは上のグラフ)になります。
上記の協力度同様、1を最低、10を最高とする10段階から期待度を選んでいただきましたがその結果、期待度の平均値は7.16となり隊員の感覚としては地域住民の定住への期待度は非常に高いと感じていることがわかりました。


しかし、一方でアンケートの「失敗エピソード」における下記のコメントのように地域における政治に巻き込まれ、思わぬ苦労をしたという隊員も少なからずいることが分かります。

「政治や思想といった活動には関わらない価値観に振り回されます。どれだけ活動としての取り組みをしても、付き合う町民の方が反町政だったりすると目の敵にされます。周囲の人間関係にはくれぐれもご注意下さい。」中部地方 40代 男性

「とにかく決裁権者の政治や理念などに関わらないこと。こちらが気をつけていても、反体制派の町民などから近寄ってきます。影響力のある地位なので色々と起きます。とにかく注意して。」中部地方 40代 男性

「町内の特定の組織にお世話になりすぎて、他の組織と若干距離ができてしまっている。町内のライバル関係にある2人に挟まれて、協力隊とどれだけ親しいかという意地の張り合いの道具にされている面が多少ある。」中部地方 30代 女性

「地域住民の派閥に注意。」中国地方 60代 男性

また、直接お聞ききした話の中には、現首長の対立派閥の方にアプローチしたことからもめたという話をお聞きしたり、地域おこし協力隊だけ報酬をもらって地域おこし活動を行っていることを快く思わない地域住民がいるという話、さらにはもともと税金である地域おこし協力隊の活動費を利用し起業することを考えている隊員に対してあらぬ誹謗中傷をしているという話もお聞きしました。

さらに、一部かもしれませんが地域おこし協力隊の定住について地元の仕事を奪うと考え、快く思わない地域住民もおられるという話もお聞きしており、自治体の規模や歴史、政治的な背景などの地域性にもよるとは思いますが、実は地域住民が様々な形で地域おこし協力隊の活動に影響を与えていると現実も見ることができました。

今回の調査の中では地域住民の方々に直接お話をお聞きしておらず、地域住民の皆さんが地域おこしについて、そして地域おこし協力隊について本音でどう感じておられるのか肌感としてお伝えすることはできませんが、協力隊の皆さんのお話を聞く限りではやはり地域おこし協力隊をよそ者と見ていること、地域おこしについて自ら積極的な姿勢をとっているというよりは自分事になっていない様子が伺えました。
また、時間の経過とともに協力隊を一住民として、もしくは地域おこしの担い手として受け入れていきますが、それは個々の住民の個別の利害に抵触しない範囲であり、たとえば、上述したように地域の人間関係における自分の立場が侵害されると感じたり、仕事の機会が奪われると感じた場合には、すべての方がそうではないと思いますが、地域おこし協力隊に対して好意的な反応を示さない方もおられる様子も伺えました。

これは、地域おこし協力隊のミッションや活動の本質を踏まえて考えてみれば不自然ではなく、地域に新しい風を吹き込むといえば聞こえはいいですが、別の言い方をすればこのままで良いと思っている保守的な地域住民の重い腰を持ち上げる仕事も含まれており、その過程の中で地域の複雑で歴史のある人間関係に踏み込んでいくことが避けられないこと、さらにはそもそもこれまでは地域住民がボランティアで行ってきた地域おこしを報酬をもらって行うと同時に仕事が少ない田舎でそれで起業することを目指す方もおられる地域おこし協力隊の仕事は、活動が順調に進めば進むほどやっかみの対象になりやすいという性質があると考えられます。

最後に

今回のご紹介した内容からは地域おこし協力隊の皆さんの中でも地域に骨を埋める覚悟で地域おこし協力隊の臨まれている方もいれば、適切な言葉ではないかもしれませんが「お試し感覚」の方もおられること、そして、そのどちらの方も地域おこし協力隊として着任したのちには受け入れなければならない厳しい現実があること、更には「自由度の高い制度ゆえの課題」でも触れましたが、その背景には右肩上がりの経済状況で人口も増加していた時代に至れり尽くせりの対応をしてきた役場とそれに慣れてしまった地域住民の関係があり、自分たちで自分の住む環境をなんとかしようという意識が低い地域住民を生み出してしまったという経緯がある様子が伺えました。

地域住民との関係を考えると、地域おこし協力隊でなくとも移住者など移住してきた人間がその地域に溶け込んでいくことは相応の時間がかかるのではないかと思われ、地域おこし協力隊は一住民となることに加え、地域の方々の協力が必須である「地域おこし」を期待されていることを考えると3年という任期が果たして適切なものなのかと少し考えてしまいます。

また、上記でお話ししたような地域おこし協力隊制度の立て付け上・活動の性質上、地域おこし協力隊が地域住民からやっかみや誹謗中傷を受ける可能性が高いことから受け入れ自治体や担当の職員が協力隊を「守る」ことも大切だと思います。
そのためには本文の中でも触れたようにメンタルヘルスのチェック体制の整備など事後的なものも大切だと思いますが、攻めの体制整備として、まずは隊員を地域のために「活かす」こと、さらには協力隊の活動が地域のために活かされていることを地域住民に積極的に「伝える」こと、つまり説明責任を果たすことを超えた積極的な情報発信がとても大切であり、結果的にそれが協力隊を「守る」ことに繋がるのではないかと感じます。

そのように感じる背景には、私個人の人事・組織開発の経験もあるのですが先進的な取り組みをしている自治体の事例もあり、その辺りの詳細は別途ご紹介できればと思います。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

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地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
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