地方創生・地域活性化の第一線で活躍する「地域おこし協力隊」

未だ多くの課題を抱えている「地域おこし協力隊」制度について現役の隊員および受け入れ自治体職員への
アンケートおよび直接取材を通して浮き彫りになった現状とその可能性について共有するサイトです


先進自治体に学ぶ制度を有効活用する方法③ 〜導入の検討および導入計画〜

 
 

前々回から始まりました先進事例に学び制度を有効活用する方法ですが、これからは「導入」「募集・採用」「受け入れ・運用」「定住支援・その他」の4回に分けて先進事例に学ぶ具体的なポイントや注意点についてご紹介していきたいと思いますが今回はその第一弾として「導入」についてご紹介したいと思います。

現在約900の自治体で協力隊を受け入れており、一自治体に一人の担当者がいるとしても900名の担当者がいることになり、それぞれに地域の歴史、地域を取り巻く環境、組織文化、地域住民の方々との関係など千差万別だと思いますが、それでも、受け入れ担当職員の皆さんが地域住民・役場・協力隊の三者がハッピーになれるような制度活用の一助になれば幸いです。

なお、毎回の注釈で恐縮ですが、本ブログは協力隊や受け入れ自治体の職員の皆さんへの直接取材とアンケート調査*1の結果に基づく内容になっていること、全国で約4,000名が活躍する地域おこし協力隊全員にお話をお聞きすることは困難であることからお話をさせていただく内容はあくまでも一部から全体を推測するものであり、あくまでも傾向であること、そして、ご協力いただいた皆さんに匿名での取材をお願いしておりますので、個人・団体を特定できる情報は一切掲載していないことをご理解ください。


*1 : 2016年5月から7月にかけて地域おこし協力隊のみなさんを対象に行ったインターネットアンケート。結果の詳細はこちらをご覧ください。

導入の検討

地域おこし協力隊の導入のきっかけとして大きく「地域住民主導(NPO含む)」「行政主導」という2つのパターンがありますが、この2つの方法に優劣はなく、どちらにせよこれまでお話をしてきたように地域住民、自治体それぞれの役割が明確になっており、それぞれが責任を持って役割を果たせる体制となっていればどちらのケースであっても機能すると考えられますが、「行政主導」で導入する場合には上記に加えて追加でいくつかの留意点があります。

まず「行政主導」の地域おこし協力隊の導入でもっとも多いと考えられるケースは、職員の業務支援目的で導入するケースです。平たく言えば、職員の定型業務に従事してもらうために地域おこし協力隊を導入するということです。
この点については協力隊の皆さんからは、任期満了後に役場の職員として採用される保証もない中でいいように使われている、など批判の声が多く、確かにそれも一理あると思います。
しかし、その一方で先述したように慢性的な人手不足で身動きが取れない自治体職員がおり、さらには高齢化が進み人材が乏しくなかなか主体的に動けない地域住民がいることで地域おこし活動が全く進まないという現状に苦しんでいる多くの地域が見られるという現実があります。
これまで話してきた地区単位での現状把握や「あるべき姿」の検討などそれさえも手をつけることができないというのが今の多くの自治体が抱える現状ではないかと思います。
別な言い方をすれば地域おこしを前に進めるためにはその状況を打破しなければならないということであり、地域おこし活動の準備段階の一つと言えます。

また、前々回でお話したように地域住民、集落支援員、地域おこし協力隊、そして自治体職員をひとつの大きな地域おこしチームと考えれば、そのチームメンバーである自治体職員の問題を解決する手助けをすることも地域おこしチームのミッションのひとつであると考えることができるのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、私個人としては地域おこし協力隊が職員の定型業務を行うということだけを見た場合にはそれ自体が悪いとは考えておらず、大事なことはその背景にきちんとした目標や計画を持ち、それを共有することであり、地域を一つのチームとして互いに助け合うことだと思います。

地域おこし協力隊に職員の仕事をしてもらう上で注意しなければならないこととして以下のようなことがあると思います。
地域おこしに関する現実的な計画と体制があること。具体的にはこれまでお話ししてきた現状把握やあるべき姿の整理、体制作りを行うという現実的な計画がしっかりとあること。
事前説明を行い同意を得ること。具体的には①の計画やその中で地域おこし協力隊に期待する活動などを募集要綱などに明記すると同時に面接時にもきちんと説明し同意を得ること。
任期満了後の仕事をしっかり用意すること。具体的には、役場の職員や公社や3セクでの仕事などになってくると思いますが、地域おこしのスペシャリストを育てるという意識を持ち、地域で活躍できる場をきちんと用意することです。別な言い方をすればその素養とやる気を持つ方を採用すべきであるということ、さらにはできないのであれば役場の仕事をさせてはならないということ。

もうひとつ行政主導で導入するケースとして、自治体としては積極的に地域おこし活動を進めてほしい集落があるが、様々な理由から地域住民がなかなか前向きに検討できない状況になっている場合などに刺激を与えることを目的にカンフル剤として外部の人間である地域おこし協力隊を行政主導で投入する場合があります。

たとえば、大きな観光資源があるにも関わらず、古き良き時代の成功体験を捨てきれず、観光客数が年々減少しているという現実を直視できない地域などが典型かもしれません。
このような地域は長い付き合いの人間関係で構成されていることから内向きの議論ばかりで顧客視点を失っていることが多い傾向があります。
このような地域に地域おこし協力隊を投入し、新しい風を入れることで、視点の転換が起きることを期待しているわけですが、現実的には非常に難しいようです。
長い年月をかけて構築された人間関係のもと現在の考え方に至っていることを考えると、それらの背景も知らないよそ者が一人入ってきても大海に一滴のしずくを落とすに等しく、結果を出すことが難しいだけでなく、投入された地域おこし協力隊が疲弊し壊れてしまうことも考えられ、とても難しいと思います。

そのため、カンフル剤として地域おこし協力隊を導入することを考えているのであれば、それなりの人材を採用すると同時に自治体職員、地域住民だけでなく関連する地域団体や一般企業などを含めたチームとして取り組んでいくことが必須になると思います。


導入計画

地域住民のリクエストや地域おこし活動に向けた戦略的な一手として地域おこし協力隊を導入するという話が自治体内であがった時から地域おこし協力隊の導入に向けた計画作りが始まっています。
物事は何事も最初が肝心と言いますが、地域おこし協力隊の導入計画作りにおいても話があがった瞬間が重要になります。

最初にすべきことは、地域のあるべき姿を踏まえた地域おこしのあり方において地域おこし協力隊に期待する役割・活動内容を明確にすることです。募集要項にきちんと記載できるように明文化することはもとより3年間を通して隊員の活動内容をできる限りイメージすることが大切になります。

隊員の活動内容をきちんとイメージできなければ、その後の計画作りの一環として考えなければならない「採用計画」や「受け入れ態勢の整備計画」、「地域住民への説明などの情報発信計画」、「報告会や活動費運用などの運用計画」などを決定していくことができなくなります。

そして、上記の計画が立てられないということは概算予算の策定ができないということになります。

以上のことから最初に時間をかけ隊員の活動についてきちんとイメージすることが非常に重要だと言えます。
別な言い方をすれば、隊員の活動内容を明確にイメージできれば、「採用計画」から「概算予算の策定」までを含んだ計画を作ることはそれほど難しくないとも言えます。

地域おこし協力隊を導入計画を作る上でもうひとつ大切なことは、地域の将来と隊員の将来を重ね合わせるということです。
得てして人は自分の都合のみで物事を考える生き物であることから、地域おこし協力隊の導入に関しても地域の都合のみを考えて導入しようとする傾向が強く、その結果、地域おこし協力隊を使うだけ使い、任期満了後の仕事について十分なサポートを行わず、ポイ捨てするということが少なくありません。

地域おこし協力隊は一人の人間であり、人生を幸せに生きる権利があります。その人生を壊さぬよう、ここで少し立ち止まって整理すべきだと思います。
具体的には地域が地域おこし協力隊に期待することと地域おこし協力隊が期待することをマッチングすることになりますが、面接時や採用後に地域おこし協力隊が将来やりたいことを聞いてから行うことではなく、地域が地域おこし協力隊に期待することをより一層具体的にすることでそれに応えたいという人材を採用することで双方の期待をマッチさせるのです。

たとえば、地域のあるべき姿として子育てしやすい集落作りというものがあり、現在その集落に住む子育て世帯から都心部で受けられるような習い事をする機会を子供に与えたいという要望があった場合、地域おこしのあり方としてその地域に子供向けの習い事ができる場を作るという計画が入ってきます。
しかし、一方でその地域には先生となる人材がいないという現実があり、このままでは実現できないことから地域おこし協力隊を募集します。そして、特定の習い事の先生ができることを応募条件として、活動内容は「地域における児童教育環境の整備」ということにするわけです。

つまり、地域おこし協力隊に期待することを具体的にすればするほど求める人材像が明確になり、その人材像に見合った人材が応募してくるためマッチングが成立するということです。
さらに地域にニーズがある活動であることから、着任後すぐに活動を開始でき、また、任期満了後の仕事としても成立する可能性が高く、隊員も安心して隊員活動を続けられるというメリットもあります。

これは徳島県神山町が行っていることで有名な「逆指名」方式を地域おこし協力隊という仕組みの中で行っているとも言え、地域おこしの基本的な考え方である地域の課題の解決と移住・定住促進の両方を解決する有効な手段ではないかと思います。


最後に

どんなことでも最初の動機や実行に移す前の計画が重要になりますが、地域おこし協力隊の導入においても同様のことが言えると思います。

間違った動機、たとえば国のお金で使える作業員として導入したり、特別交付税欲しさに導入すると、大きな可能性を秘めている制度の成果も言葉を選ばずにいえばその程度になります。

また、正しい動機があったとしてもそれが将来のあるべき姿とつながっていなかったり、そもそもその将来の姿が曖昧であったりすると、導入はしたもののうまく活用ができないということになり、期待できる成果は半減すると思います。

個人的には地域おこし協力隊の導入に関して、いやもしかすると自治体の活動全般に関して、導入のための準備工程が全てではないかと思います。なぜならその実行主体は地域おこし協力隊であり、地域住民だからです。

次回は、「採用と募集」についてのポイントや注意点についてご紹介致します。

最後に一点お願いです。

現在昨年に引き続き2017年地域おこし協力隊向けアンケートを実施しています。
これまでに全16回となっている本ブログ「地域おこし協力隊の仕事」も昨年多くの方にご協力いただいたアンケートの結果が非常に重要なインプットとなっております。
アンケートは現役の隊員、任期満了された隊員、途中退任された隊員の皆さんが対象になります。
今回のブログの内容は主に受け入れ自治体の方向けに内容となりますが、ぜひ貴地域で活躍されている協力隊の皆さんにご紹介をいただければ幸いです。
アンケートは下記の「アンケートに協力する」ボタンをクリックいただくことでスタートします。

ご協力のほど何卒宜しくお願い致します。

現在2017年地域おこし協力隊アンケート実施中!!

下記をクリックしてアンケートを開始!

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本ブログの著者

ミエルカ・ラボ代表 石橋宏太

国内に限らずロンドン・ニューヨークなど国外での就業経験を持ち、事業・業務プロセス・組織・人材の変革に多く携わった経験を持つ変革推進(チェンジマネジメント)のスペシャリスト。
現在は企業経営・変革推進の視点から地方自治の変革や地方創生・地域活性化を支援する事業を行っており、その一環として地方の課題の一つである人材活用の観点から地域おこし協力隊に興味を持ち、調査を開始。直接取材やアンケート調査を通して100人以上の地域おこし協力隊関係者と話をした結果を構造的に分析し、人材育成の観点から協力隊を地域おこしに繋げる独自の手法を確立。現在は地域おこし協力隊の導入・運用についても積極的に支援を行っている。

講師実績
2017年6月9日 全国地方議会勉強会「地域おこし協力隊の現状と課題」「先進事例に学ぶ地域おこし協力隊の活用術」

講師・研修などのご依頼は下記までお気軽にお問い合わせください。
お電話:080-4170-2703
メール:kota.ishibashi@visualization-labo.com
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皆さんの意見を聞かせください

地域おこし協力隊制度はまだまだ発展途上であり、事例やノウハウの共有が必須になります。
皆さんのご意見・ご感想などなんでも結構です。多くのコメントをいただき、本サイトが地域おこし協力隊のノウハウ蓄積・事例共有の場の一つになれば幸いです。